1部分:第一章
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のだった。流さずにはいられなかった。
「悲しい・・・・・・」
「何という歌だ」
その歌は一度聴くと忘れられないものだった。皆涙を流し食事さえも喉が通らない。寝ても覚めても悲しみに心を支配され胸が張り裂けそうだった。いたたまれなくなった彼等はここで遂に動くのだった。動かなくてはもういてもたってもいられなかったのだ。
「これはかなわん」
「韓蛾だ」
自然と言い合うのだった。
「韓蛾を呼ぶんだ」
「まずは彼女に謝ろう」
「そうだ、まずはそれだ」
その悲しさの前に自分達の狭量さを恥ずかしく思ったのだ。そうしてその中で今彼女に謝罪することを決意するのだった。
すぐに彼女を探して呼び止めた。そのうえで頭を垂れる。
「すまなかった」
「わし等が悪かった」
まずはこう言って謝罪するのだった。
「韓の者だと言って」
「申し訳ないことをした」
「それでじゃ」
謝罪したうえでさらに言葉を続ける。
「宿もあるし」
「金もある」
この場合の金は謝罪のものである。
「そしてじゃ。歌ってくれんか」
「歌を」
こう韓蛾に頼み込むのであった。
「今のままではあまりにもの悲しくて」
「何も食えはしない」
「寝ても覚めても悲しい」
「だから。それで」
そしてまた彼女に乞う。
「何か楽しい歌を歌ってくれ」
「頼む」
「楽しい歌をですか」
それまで黙って話を聞いているだけだった韓蛾が歌と聞いてこの場でははじめて口を開いたのだ。普段はあまり話さない性分であるらしい。
「楽しい歌を歌って欲しいのですね」
「そうじゃ。あんなことをして申し訳ないが」
「それでもじゃ」
「頼めるか?」
こう韓蛾に問うのであった。
「まあ駄目じゃったらいいが」
「あんなことを言ったわし等じゃからのう」
自然と視線が逸れてしまう。罪の意識がそうさせていた。
「けれど。よかったら」
「頼めるか」
「ええ」
だが大方の予想に反して韓蛾は。静かに頷くのであった。
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