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鐘を鳴らす者が二人いるのは間違っているだろうか
7.絶望の淵に立ったもの
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ある。
 神々が大量に降り立ち、正教圏とアンチ・クリスタリズム圏の丁度境目に存在する場所――オラリオ。その地では、自らの力を人と同程度にまで落とし、共に歩もうとする神も存在している。
 あの迷宮都市こそが、世界の命運を握る世界の特異点。すべてはあそこに集約する。
 だからこそ、賭けをする。

「――イデアをここへ呼べ」
「ブレイブ……いいのか?彼女は確かに成長したが……」
「それをこれから確かめるのだ。この日の為に、あやつを育ててきた……」

 会議のメンバーに動揺が走る。

『閣下。恐れながら……彼女はまだ精神的に幼すぎます。このままオラリオに送り込めば、邪な考えに惑わされて――』
「いいや、あれはそんなに流されやすい頭をしていない。むしろ、あやつは見なければいけないのだ。世界というものを」

 エタルニア公国元帥、ブレイブは信じている。
 例えその決断が彼女にとって知りたくなかった事実や、別れを伴うとしても………必ず『答え』を導き出すだろう、と。

「あの子はまだ純粋無垢だ。だからこそ、我らには導き出せぬ新たな希望を見つけるとしたら――イデアしかいない」

 イデア。イデア・リー。我が最愛の娘よ。
 私はお前のその小さな背中に――可能性という名の希望を託す。



 = =



「――神殿は、どうなりましたか」
「さあ、な」

 消え入るような少女の問いに、ナジットは感情の籠らない返事を返した。

「修道女たちは、皆は、私を庇って………ッ!!」

 クリスタル正教直々の巫女護衛依頼。ナジットにとって重要なのはやるべきことではなく、それを為した時に得られる報酬でしかない。故に、ナジットの後ろで涙を流す少女にかける声もなかった。報酬さえ得られればそれで良く、後の事に興味はない。
 だが、ナジットとて何の感慨も抱いていない訳ではない。

(あの魔物たち……明らかに風の神殿の制圧を目的に動いていた。それゆえ裏をかいて巫女を逃す事が出来たが………あれは、なんだ?テイムモンスター……か?)

 異様に統率されているようで、その節々では野生らしい狂暴さを見せる魔物たちは、瞬く間に風の神殿を包囲してきた。ナジットも水の神殿襲撃の事件こそ把握していたものの、現実に遭遇してみると驚いた。
 この付近に住む野良魔物たちとは比べ物にならないほどに強かったのだ。
 これで護衛がナジット程の実力者でなければ巫女の命はなかった。うぬぼれる訳ではないが、それほどの電撃的襲撃だった。巫女アニエスを救出し、無事に脱出できたのは僥倖と言わざるを得なかった。

「私は、これからどうすれば……!!」
「一先ず、迷宮都市オラリオへ赴く。それから足を確保し、お前をクリスタル正教総本山ガテラティオまで送り届ける
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