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鐘を鳴らす者が二人いるのは間違っているだろうか
5.君はもっと強くなる
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事である。
 なら、無理に戦わずにとにかくヘイトをこちらに集める。出来ればそのままミノタウロスの動きを誘導してベルを逃がす隙も与えてやりたい。

 ふっと軽く息を吐きだし、ミノタウロスのリーチギリギリから槍による刺突を繰り出す。
 だが、硬い表皮に阻まれて思うほど傷を与えられない。リングアベルとミノタウロスのステイタス差が大きすぎるか、或いは槍の性能が悪いせいかもしれない。そう分析していると、鬱陶しい蠅を払うようにミノタウロスが暴れ出した。

 ブオン!と空を切る音が空間に響き、バックステップしたリングアベルの前髪に微かに拳が掠った。
 あれに命中していたら――どっと冷汗が溢れる。恐らく痛いでは済まなかっただろう。内心でほっとしたのもつかの場、ミノタウロスの連撃が次々に襲いかかった。

「どうしたウスノロ!そんな大雑把な動きじゃ女の子に逃げられるぞ!?」

 挑発によって自分を鼓舞しながら、さらに荒れ狂うミノタウロスの猛攻を全力で躱す。しゃがみ、跳躍し、地を駆けながらその暴風を躱し続けた。体力の消費は激しいが、その隙にベルがなんとか袋小路から脱出するのが見えた。

「リングアベルさん!援護を――」
「そんなことより助けを呼べ!!お前が来たところでコイツは倒せない!俺も長くは保ちそうにないから、早く!!」
「でも、ここで見捨てたら……まるで僕が殺したみたいじゃないですかぁッ!!」
「愛に生きる男、リングアベル!世界中の女性とガールフレンドになってないのにこんな所で死ねるか!!」
「こんな時まで女の子第一!?」

 この意地っ張りめ、上に戻ったら絶対に晩飯を高い店で奢らせてやる!と心の中で叫ぶリングアベルだったが、ここで5層まで全力疾走して失った体力分が体を鈍らせ始めていた。次第に重りを背負ったように動かなくなっていく体。せめて反撃の隙があればいいが、無尽蔵のスタミナで暴れまわるミノタウロスにこちらからの有効打がない。

 この前バグベアーを一撃で仕留めた『ホライズン』も、この至近距離で敵の攻撃を避けながら命中させるには難し過ぎる。考えれば考えるほど、状況に希望が見えない。
 やがて、とうとう疲れの所為で一瞬集中力が途切れ、足が周囲のぬかるみに取られる。

「しまッ―――」

 瞬間、全身が弾かれるような衝撃に見舞われて、体が宙を舞った。体はそのまま壁に盛大に叩きつけられ、肺から空気が強制的に吐き出される。

「ガハァッ!!」
「リングアベルさんッ!!」
「はぁ……うぐ、げほッ!はぁ……はぁ……」

 辛うじて握ったままでいた槍を杖代わりに何とか立ち上がり、ミノタウロスを睨みつける。
 吐き気がして、全身が焼けるように痛む。額からは血も流れているようだった。極度の疲労から何度呼吸しても上手く酸素を
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