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鐘を鳴らす者が二人いるのは間違っているだろうか
4.アイツは人気者?
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を泣かせるなんてよくないですよね?」
「その通り!……いいか、ベル。女性に流させていいのは嬉し涙だけだ。お前も男ならよく覚えておけ」

 帰り道の方へ翻りながらフッとニヒルな笑みを浮かべたリングアベルの背中は、どうしてかベルにはとても恰好良くて大きく見えた。
 ……着実にベルの心がダメな方へ流れているようにも見えるが、誰に憧れを抱くのかは人それぞれ。気付かぬうちに、リングアベルはベルの心の師匠となりつつあった。

「流させていいのは嬉し涙だけ……リングアベルさんの話は深いなぁ。勉強になります!」
「何なら今夜は女性について語り明かすか?俺は一向に構わんぞ!………あ、でも女神ヘスティアに怒られそうだから別の機会にするか」
「あはははっ!なんだか神様ってリングアベルさんのお母さんみたいですね!」

 二人の鐘は、楽しそうにカラカラと鳴り響いていた。
 日記によると、ヘスティア・ファミリアが激動の冒険に巻き込まれていくのはまだ少し先の話である。 



 = =



 リングアベルとベルがダンジョンを出ると、既に今日のひと仕事を終えた冒険者たちの喧騒が聞こえてきた。その空気は剣呑で、皆がリングアベルを睨みつけている。

「おい、あの色褪せたブロンドの優男……噂のアスタリスク持ちか?」
「間違いねえ。特徴的な前髪に白髪。ついでにあの貧相なスピア……ふん。武器なんて何でもいいってか?これだからアスタリスク持ちは鼻持ちならねぇ」
「おい、やめろ。『尾食蛇(ウロボロス)』の連中に聞かれたらどうする?」
「ハン、構うものか!どうせあいつはウロボロスじゃねえんだ。アスタリスク持ちの一人くらい怖くはねえぜ!」
「公国の脱走兵か何かだろ。負け犬さ負け犬」

 これにはリングアベルも流石に顔を顰めた。ベルも何事かとびくびくしている。
 ウロボロス――リングアベルには聞いたことがないワードだ。彼らはそのウロボロスとやらをひどく恐れているように見えた。口ぶりからしてアスタリスクの加護を受けた人間と関係があるようだが、質問して素直に答えてくれそうな相手ではない。
 リングアベルはとりあえず、この前口説いたギルドの受付嬢に聞いてその辺の情報を集めることにした。
 ベルはベルで、自分の担当になった受付の、エイナと話をしている。

「リングアベル、今日は無茶してませんヨネ?」
「後輩を連れて無茶なんてしないさ。それに女神ヘスティアにも随分怒られて、流石に懲りたよ。だからそんなに不安そうな顔を見せず笑っておくれ、レディ……」
「あ、あうあうあう……お戯れはそこまでニ……」
「戯れでないとしたら?」
「し、仕事中はまずいですッテ……!」
(またやってるよアイツ……)

 赤面する受付嬢を追い詰めていくリングアベルの異様
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