第一話
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ぱり一晩漬け込んだのは正解ね。ちなみに弁当は二段重ねで、下段がご飯、上段が千切りキャベツの上に豚の生姜焼きを添えた生姜焼き弁当である。
「毎度のことながら思うんだけど遥、アンタのお弁当って、その…なんて言うか…」
「女の子のお弁当ではないわね」
「ストレート過ぎるわよ菜々星!」
「もしくは雑ね」
「酷くなってるよ菜々星ちゃん!」
うん、外野が何やら言っているが無視する。どうせ何か言ったところで菜々星を調子づかせるだけなのだから。
だから耐えろ私!
高速でこれでもかと力を入れながら生姜焼きを咀嚼する。
「厚めの千切りキャベツに、豚肉と一緒に漬け込んだ生姜をそのままに炒めた生姜焼きとご飯のみ、まるで一人暮らしを始めた男の弁当ね」
ブチッ
「この性悪女ぁああああああぁぁ……痛いいたたたた離しなさいよー!!」
思わず飛び掛かった――弁当に被害が出ないよう注意しながら――私の手を菜々星は一瞬で掴み後ろに回してねじり上げた。ドラマなどでよく見かける単純な技だが、これがかなり痛い。
「私に手を挙げようなんて十年早いわよ」
「痛たたたた、ちょ、それ以上はダメ!ギブギブ!!」
「な、菜々星ちゃん、喧嘩はだめだよ!」
「喧嘩じゃないわ制裁よ」
「いいから離せえええぇぇぇ!!」
「……ま、いつも通りね」
そう。
若干サディスティックな笑みを浮かべながら私の腕をねじり上げる菜々星。
それを必死に止めようとするすずか。
我関せずと一人弁当を食べるアリサ。
そして、“仕事”でこの場にいない三人の少女を加えた合計七人の女子グループは、面子は違えど毎回こんなやりとりをしている。と、昼休みの屋上の一コマとして知られていた。
………関わるつもりじゃなかったのにどうしてこうなった……。
腕をねじ上げられ悲鳴をあげながら、私は心の中で溜息をついた。
その後、流石に見かねたアリサがすずかと一緒に弁護してくれたので無事に解放された。
解放された私は色々言いたいことをグッと堪え、大人しく食事を再開する。
最も、食べながらずっと菜々星にどう仕返ししてやろうかと考えていた為、味わう余裕はなく、
結局食べ終わる頃には、どうやっても返り討ちに合うだろうという結論にいたり思わずため息をついた。
「幸せが逃げるわよ」
「誰のせいだと思ってるのよ」
「私のせいじゃないわね」
「……テンドンする気はないわよ」
「あら残念」
これっぽっちも残念そうじゃないすまし顔で菜々星は食事を続けている。
ちなみに菜々星の弁当は、プチトマトやブロッコリー、卵焼きにミートボール、ご飯の上に黒ゴマと真ん中に梅干しを添えた、日本人ならお弁当と聞いて最初に思い浮かぶような色鮮やかなお弁当である。
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