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第二章

 しかもだ。今はだった。
「キリスト教だったな」
「うむ、あの者達の数も増えていっている」
「皇帝の権威を認めず神だけにすがる」
「あの者達が増えてはローマが滅ぶぞ」
 ローマは皇帝が治めている。その皇帝の権威を求めないならだ。国家の基盤が揺らぐ。だからこそ彼等も危惧していたのだ。キリスト教徒に対して。
 だからこそだ。彼等は是非共だった。
 ネロに対してだ。立ち直ることを期待していた。しかしだ。
 ネロは塞ぎ続けていた。その彼を見てだ。
 ローマの者達は遂にだ。彼に頼むことにしたのだ。
 重厚かつ思慮深い顔立ちをしている。背筋は伸び威厳と学識を備えた壮年の男だ。彼の名はセネカ、ストア派の学者でありネロの教師でもある。ネロを補佐して政治にも携わっている、まさにローマの重鎮だ。
 その彼に対してだ。ローマの者達は口々に頼み込むのだった。
「こうなってはセネカ殿だけが頼りです」
「どうか皇帝をです。何とかです」
「もう一度明るくして頂けますか」
「さもないとこのままでは」
 政務に支障がでかねない、ネロのムラッ気のある性格がそちらに影響が出ることが充分に考えられるからだ。だからこそセネカにも頼み込むのだった。
 その彼等の言葉を受けてだ。セネカもだった。
 その思慮深い顔からだ。こう答えたのだった。
「時ですね」
「では最初からですか」
「皇帝に申し上げようと考えておられたのですか」
「セネカ殿も」
「はい、ネロ様は非常に繊細な方です」
 教師として常に傍にいるからだ。彼はよくわかっていた。
 それでだ。こう言うのだった。
「ですから他の者にとっては何でもないこともです」
「ああして衝撃を受けられて」
「塞ぎ込まれるのですね」
「そうです。だからです」
 それ故にだとだ。セネカは言っていく。
「ここは私から皇帝に申し上げます」
「ではお願いします」
「是非共」
「確かに文字は人を殺します」
 セネカもそのことは否定しない。しかしだった。
 それと共にだ。彼はこうも言った。
「しかし人を生かしもするのです」
「文字がですか」
「そうされるのですか」
「はい」
 その通りだと。また述べるセネカだった。
「ですからここはです」
「お任せして宜しいでしょうか」
「セネカ殿に」
「そうして頂ければ何よりです」
 こうしてだった。セネカは知的な確かな顔でだ。彼等に応えてだ。
 そのうえでネロの下に向かった。ネロは今も己の席に座ったまま暗い顔をしていた。だがその席からセネカが来たことに気付いてだ。そのうえで彼に声をかけた。
「先生、一体」
「皇帝にお話したいことがありまして」
「私に?」
「はい、左様です」
 その通りだと述べるセネカだった。
「それでお伺
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