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ダンジョンに出会いを求めるのは間違っていた。
第十九話
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 未だ聴覚を取り戻していないリリだったが、肥大化した金への執着と神酒(ソーマ)に囚われた者達の狂気の顔を見て、何を欲しているのかすぐさま悟った。それを渡したところで、キラーアントたちへの囮にされ殺されるという未来も。
 結局助けられないと解っていても、リリは素直に受け入れた。自分の全財産とも言える保管庫の鍵を手渡したのだった。全く意味ないけども、自分を受け入れてくれたベルへの報いだと言うならば然るべき結露だろうと。

 ばちんと荒々しくリリの手から鍵を取り上げたカヌゥたちは、やはりリリなんかに目もくれず、早々に立ち去るべく踵を返した。その代わりにキラーアントたちが一斉にリリへ翻す。

 その絶望的光景を見て、リリは乾いた笑みを浮かべた。
 今までろくな人生を送らなかった自分だったが、最後の最後でこれだ。釣り合いなんて元からないような終止符だ。でも、もし死後の世界があるとするならば、そこで今度こそリリは清く生きていたいなぁ。

 ひ弱な体に容赦なく叩き込まれた暴力の数々によって、リリの意識が遂に永遠の闇に溶け込もうとした、その時だった。

「やあ、冒険者さんたち」

 モンスターによって塞がれつつある通路のうち唯一まともに通れる通路から、一人の少女が現れた。片手に薙刀を持ち、背中に不相応な大きさをするバックパックを背負った、黒髪が特徴的なヒューマンの少女。
 キラーアントがひしめく空間に驚くほど似つかわしくない、軽い挨拶をした少女に、カヌゥは驚きより困惑を先に表した。

「あァ? 何だテ──」

 彼の返事は、そこまでだった。そこから先の声は、喉に空気が流れただけに終わった。カヌゥは困惑の表情のまま固まり、その体勢のまま後ろへ棒のようにバタリと倒れた。そこには、小さな握り拳を押し出した姿勢で止まっている少女の姿。

「て、テメ──」

 我に帰った仲間たちが声を上げようとした瞬間、再び少女の体が霞み、見失う速度でそれぞれの鳩尾に正確無比に拳を叩き込み意識を刈り取った。
 遅れてバタリバタリと平伏すファミリアのメンバーたちに、少女は嫌悪と侮蔑の眼差しをくれただけで、すぐにリリへ視線を戻した。

 あまりに呆気なく、あまりに迅速に五人もの冒険者を無力化してのけた刹那を痛みと絶望を忘れて呆然と見つめるリリの前で、少女レイナは立ち止まった。

「ベル君は……と聞かなくても、解りきったことでしたか」

 今になってようやく耳が戻り始めたリリはレイナの言を聞き、唇を噛みうつむく。やはりレイナはリリが犯行に臨むことを予期していたのだ。だからタイミングも一致したのだ。今もなおキラーアントがリリを食い殺さんと歩み寄ってくるが、レイナが石突を地面に打ち鳴らせばピタリと動きを止めた。さながら圧倒的強者に凄みを効かされ
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