第十九話
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素直な子です」
細い指に撫でられる髪が感覚を持っているかのように気持ちよくて。気がつけば今までで一番近いと断言できるくらい顔が目の前に迫っていて。全部を受け入れてくれそうな笑顔がそこにあって。僕より一歳下の女の子に誉められて、撫でられて。
じゅぅっ、と強熱が鼻頭から首をくまなく熱した。
「ぅ、ぁ」
胸の奥を甘く締め付けられる感覚と、爆発した羞恥が僕の中でごちゃ混ぜになって、言葉どころかろくに身動きすら取れなくなった。
「? 何だか顔が赤いですけど大丈夫ですか? もしかして熱とかあるかも……」
元凶のレイナさんは全く無自覚できょとんと可愛らしく小首を傾げながら、爛熟しすぎた林檎のように茹で上がっているであろう僕の顔、正しくは額に手を伸ばしてくる。
頭の中がろくな事になっていないけど、ほぼ反射的に僕は距離を空けて捲くし立てた。
「だだだ、大丈夫でですっ!? ちょっと明日のことを考えたら緊張してきたなぁなんて思ったりしなかったりというか……っ!?」
「う、ん……? 体調には注意してくださいね? ダンジョンでぽっくり倒れてちゃうと大変です」
文法のおかしい言葉を矢鱈目鱈口走った僕を気遣いつつ、行く宛てを失った腕が下ろされた。
あぁ……きっと柔らかくて、ひんやりしていて、気持ちよかったんだろうなぁ……。って、これ以上恥ずかしいことされたら溶けて死んじゃいそうだってば!?
無償に鼻を押さえたい衝動に駆られ、それに身を任せつつ今の顔を隠すようにレイナさんに背を向けて九層の連絡路に向けて歩く。
突然進路を変更した僕に首を傾げたレイナさんだったけど、特に言及することもなく僕の後ろに着いてきた。
正直声を掛けられなくて本当に助かった……。あんな可愛いのを間近で見た僕の顔が、とんでもなくだらしないものになっているだろうから……。
◆
当日になった。レイナさんに意見を貰っても、やはり釈然としない心持のままリリと合流した。勿論新しく踏みしめる十一階層へ緊張の念を寄せているから、というのも原因だ。けれど、最後の最後までリリに対する引っかかりを見つけることが出来なかった。
神様には、本当に信用に足る者なのかと訊ねられ、
エイナさんには、所属しているファミリアの風潮がキナ臭いかもと案じられ、
レイナさんには、最後まで信じてあげてほしいと促された。
三者三様、別方向に対する意見だ。神様とレイナさんに至ってはほぼ真逆とも言える。参考にはなったけど、結局解決までには至らず今に至った。
だからと言うべきか。やはりと言うべきか。
そして、僕の中で引っかかっていた何かが具現したのだった。
◆
これで良いんです。
リリは何度目と
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