第十九話
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を習得した。神様曰く魔導書による強制発現だったみたいだけど、経緯はどうあれ確かに僕だけの魔法を手に入れたんだ!
短刀片手にソロで挑んでいて乏しかった遠距離攻撃を獲得した今では、以前よりも確然とした安定を得られている。万が一にも頼りになる存在だ。
改めて僕の現状を確認できてひとしきりの安心感をかみ締めたところで、レイナさんが耳に掛かった黒髪を払いながら言った。
「ただ、だからと言って油断してはいけませんよ? 極東に『油断大敵』という言葉がある通り、足元を掬われちゃいますよ」
「あはは、大丈夫ですよレイナさん! そのことならエイナさんにみっちり聞かされ──ってっとぉ!?」
「今まさに油断していましたね?」
ひ、酷い! そりゃレイナさんが足を引っ掛けてくるなんて思わないじゃないですかぁ! うぅ、派手に躓いただけに情けない声を上げちゃった……。でも、おかしそうに笑うレイナさんの笑顔を見れた分チャラということにしておこう。
こほんと芝居がかった咳払いを入れたレイナさんが笑顔を引っ込めて、妙に真剣味を帯びた顔つきで僕をまっすぐ見つめてきた。
「今みたいに、ダンジョンでは何があるか解りません」
「いや、今のはレイナさんが足を引っ掛けただけじゃ……」
「そう、今のは私がわざとやったことです。ですが、些細なミスで連携を取れなかったり、もしかしたらお互い縺れ合うかもしれません」
連携という言葉を聞いて、少し浮かれていた思考に冷水を被ったかのような寒さが訪れた。リリというサポーターが着いてから色々と楽になった。バックパックを始めとした備品類は勿論、戦闘中もリリが第三者の目線に立って戦局を把握してくれているから僕も安心してモンスターと戦う事が出来た。
でも、今の僕が、リリの何かを探ろうとしている僕が、果たして新境地という環境でリリに心置きなく背中を任せることが出来るのだろうか。
しんみりとなった僕になおも真顔で諭すレイナさんは、ふっと口元を綻ばせて目元に皺を寄せた。
「ベル君のサポーター、リリさんを信じていればきっと大丈夫です。何があっても信じていれば、これから先のベル君にきっと良い影響となるはずです」
それから、僕たちはお互いをじっと見つめ合った。漆のような綺麗な黒の瞳から発せられる光に僕が引っかかっている何かの手がかりがありそうで、真剣にその光を見つめていた。
ちょっとした無言の空間で、不意にレイナさんが程よい肉つきの腕を伸ばして。
僕の頭に手を乗せて、ぽんぽんと撫でた。
はえ? とさっきまでの真剣な空気を忘れて呆けた僕に、レイナさんが優しさに満ち溢れた笑顔で言った。
「ベル君は優しくて
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