第十九話
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襲ったところでどうなるのっていう話だ。有り金と装備などを剥げるけど、それだけだ。リターンと比べてあまりにリスクが高すぎる。
それに今回の場合、リリは【ソーマ・ファミリア】所属だ。もともと探索系ファミリアではない。商業がらみでぶつかり合いがあるというのは有り得るけど、闇討ちまで発展するかと言われれば首を傾げる。
まあ、ただそれだけだ。大げさに切り出しだした割にオチが無いけど、僕はリリが時々見せる暗い表情が気になってしょうがなかった。リリはファミリアが定めているノルマを乗り切るためにお金を用意しなくちゃいけないと言って、十一階層に臨もうと持ちかけてきた。
僕はそれを信じた。ファミリアの名前に泥を塗りたくないと、こんなにも幼い犬人の女の子が身を張って頑張っている。応援してやりたい。
でも。にも拘らず。見落としているのか、それともリリに隠されているのか解らないけど、僕の心が潔く頷けない何かが、そこにはあった。僕が臆病だということ以外の何かが。
「十一階層ですか?」
キンと石突を鳴らして薙刀を支えたレイナさんが反復した。今日はリリに件の話を持ちかけられた翌日だけど、リリは十一階層を踏破するための準備を整えてくるということで欠席している。ダンジョンに絶対なんて無いと身を持って体験している僕は、明日に控えている未知の冒険に備えるべくダンジョンに潜っていた。そんなところに運良くレイナさんと合流できた、というわけだ。
毎度のこと、噛みながら一緒に回ることをお誘いしつつ、リリと面識を持っているらしいレイナさんに今回の件を打ち明けてみたところだ。事前に神様とエイナさんにも相談したことだけど、意見を聞けるならより多く聞いた方が良いはずだ。
レイナさんは中々堂に入った佇まいで瞑目しつつ細い顎に指を掛ける。ダンジョンの中で会って一緒に回る度に思っていた事だけど、僕が知らないだけでレイナさんって実はとんでもなく凄い人なんじゃないか……? あまりにも自然に付いてきてたから失念してたけど、一応ここって十階層。加えて神の恩恵を授かっていない身のレイナさんが苦も無くモンスターを倒せてるって、ひょっとしなくとも凄いことだよね。
身近にいるはずなのに、どこか遠くにいるようなレイナさんが再び口を開いた。
「大丈夫だと思いますよ」
「本当ですか!?」
「ここに来るまでのベル君の動きを見ていましたが、特に問題は無かったと思います」
あまり無責任に言えることじゃないんですけどね、と可憐に微笑んだレイナさん。ステイタスの詳細は教えていないけど、やっぱり推奨を超えているだけあって不安要素は無いらしい。
「それに【ファイアボルト】もあることですし」
そう、僕はついに魔法
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