第三章 [ 花 鳥 風 月 ]
五十五話 凶夜の警鐘 弐
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虚空の一人芝居にその場に居た全員が呆れ顔をしていたが本人は結構満足しているようだ。
「……はぁ、まぁいいわよ付き合ってあげる。と言うよりは連れて行かなかったら勝手に付いていく予定だったしね、あのクソ鬼は私が殺すわ」
そう言いながら幽香は真紅の瞳に殺意を点らせ微笑みを浮かべる、しかしその微笑みは見る者の心を恐怖で凍て付かせる冷たさを宿していた。幽香以外の全員がこれほど恐ろしい殺意を向けられる百鬼丸に多少同情の念を抱いたのは仕方が無い事であろう。
「殺る気が滾っている様で結構結構、天魔達もいいかい?」
「はい我等天狗衆、盟主殿と共に行く事に異存ありません」
虚空の問いに静かに、そして固い決意を滲ませながら答える天魔の背後には何時の間にか烏天狗と白狼天狗が整列していた。
「さて気を引き締めようか、何たってこれから大和と戦争しようって連中にこの人数で挑もうっていうんだから!」
「一番気を引き締めないといけないのはお父様でしょ?」
虚空の宣誓に空かさず紫が突っ込みを入れる、それはもう絶妙な速さで。そしてそんな紫の言葉に周囲からは『確かにその通りだ』等と同意の声が幾つも上がり小さな笑い声が広がる。
「非道いな〜まぁその通りなんだけどね。さて準備が整い次第出発しようか、細かい作戦は移動しながら説明するよ」
時刻は零時を回り夜は一層深くなっていく。その暗い闇の先に何が待つのかはまだ誰にも分からない………………
「そう言えばさ虚空、追跡の術が上手くいってなかったらどうするつもりだったのさ?」
思い出したかのように諏訪子は隣を歩く虚空に問いかけた。上手くいったからいいものの、失敗していたらどうしていたのか?と。
問われた虚空は不敵に笑うと、
「そんなの決まってるじゃないか、上手くいかなかった時は……………………その時考えるつもりだった」
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