第三章 [ 花 鳥 風 月 ]
五十五話 凶夜の警鐘 弐
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“術印”を打ち込む為です、無駄な事ではないのであまり盟主殿を責めないでください」
天魔の言葉通り萃香と立合わせをしたのは追跡の印をつける為。
天狗の術の一つであるその追跡の術は目標に直接接触で術印を付けなければならなかった為、萃香に警戒されるのを避けた結果があの殴り合いだったのだ。
本来の目的が触れるだけだったので虚空が言った通り勝敗はさほど重要ではなかった。もっとも本人も口にしていたが勝っていれば手っ取り早く手間も掛からなかった訳だが。
「お父様の思い付き……じゃなかった、作戦は理解出来たけど――――でもあの小鬼が素直に本拠地に帰る保証は無いわよね?」
そんな紫の懸念はもっともだった。本拠ではなく別の住処に行く可能性もあるのだ、時間が無い今そんな不確定な事をする余裕はないはずだ、と。だが虚空は確信しているかの表情で、
「大丈夫だよ、だってその為に焚き付けたんだから」
虚空が萃香に百鬼丸の事を話した理由の半分は、彼女の意識を“本拠帰還”に傾ける為。さとり達の話から仲間を重要視する傾向が見られたので、危機意識を煽ればほぼ間違いなく開放した後本拠に直行すると踏んだのだ。
ちなみに残りの半分は“上手くいけばそのまま此方に加担するかも”という希望的観測だった(この辺りの思考をさとり達が読んだ)。
「まぁ話はこの位にして準備をしようか、あぁそうそう悪いんだけど綺羅と幽香も一緒に来てもらうから」
気持ちを切り替える様にそんな話を切り出した虚空に対し綺羅は、
「はい構いません、恐らく彼等の本拠地は結界に守られている筈です。微力ではありますが御力添えいたします」
と、力強く答える。
彼の言葉通りこれまで集めた情報と状況から鑑みて百鬼丸の本拠は結界を使用し隠蔽、もしくは防御されている可能性が高い。人間である綺羅にとっては危険ではあるが高位の結界術師である綺羅の力は必要不可欠なのだ。
快く承諾した綺羅と打って変わって幽香は微妙な表情を浮かべていた微妙と言うよりは呆れている、と言った方がいいのかもしれない。
「……ねぇ虚空、あんた私に言った事覚えてないとか言わないわよね?」
幽香の言っている事は七枷の郷を襲撃(幽香の本意ではないにせよ)した際の虚空自身が出した処分の事だ。
『七枷の郷の全ての住民から赦しを乞う事、それまでは郷から出る事を禁ずる』
その問いかけを聞いた虚空は暫し無表情の後、額を指で叩き思案するような仕草をし――――急に頭を抱え、
「クッ!急に一時的且つ局所的な記憶障害がッ!幽香の言った事が思い出せないッ!多分さっきの蹴りの衝撃が原因だと思うッ!でも大丈夫!明日には思い出している!うん間違いなく!――――よしこれで解決だ」
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