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鐘を鳴らす者が二人いるのは間違っているだろうか
2.ダテ男は伊達じゃない
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承する事が出来る。その代り、鍛錬を積まなければ本当には強くなれないという点において、冒険者と似たような条件ではある。

 いつ、だれが、どのようにそれ作ったのかは神でさえその詳細を知らない。
 何故ならば、クリスタル正教には通常の宗教ではいて当たり前の、崇めるべき主神が存在しないからだ。神がいれば、神々の間で話が出回るだろう。だが、あの宗教が崇めるのはあくまでクリスタルであり、神とは何の関係性も存在しない。

 世界を構築する四大元素である風、水、火、土の集積体である4つのクリスタルに祈りを奉げる事でこの世界の維持を幇助する、というのが基本的な考え方で、『無償の祈り』にその絶対価値を置く。ヘスティアたち神々がクリスタル正教に関して知っているのはそのくらいだ。

「きっとリングアベルはクリスタル正教かエタルニア公国のどちらかで、その職権付与を受けたことがあるんだろう。無論これは仮説でしかないが、特にエタルニアはダンジョン外の魔物討伐を一挙に引き受ける軍事国家だ。あそこにいたならその身のこなしも説明がつくよ」
「俺としては正教の方がいいのだが。神殿にて敬虔な祈りを奉げる無垢な巫女たちに、是非ともお近づきになりたい!!」
「そんな理由!?もう、リングアベル!真面目な話してるんだよ!」
「大真面目さ!軍事国家なんて女の子が少なそうじゃないか!俺は嫌だぞそんな所!!」
「……最北端の国エタルニアにはスタイルの良い美人が多いことで有名だよ」
「公国も悪くないなっ!!」

 そしてこの掌返しである。この女性関連限定で発動する気持ちの切り替えの早さに、ヘスティアは呆れて物も言えなかった。記憶を失う前もこの調子で女性ばかり追いかけ回していたんだろうか、それとも記憶が消えたせいでこうなったのだろうか。

「どっちも嫌だなぁ……」
「ん?何か言ったか女神ヘスティア?」
「何でもない!それより、そういうことだからギルドを通して両国に確認を取ってみたらどうだい?オラリオとは山脈を隔ててるから交友は少ないが、ギルドならとりなしてくれるだろう」

 これが切っ掛けで記憶が戻ってしまう不安はあるが、もしかしたら向こうに彼の本当の家族がいるかもしれない。彼のみを憂い、毎夜眠れぬ日々を送っているかもしれない。もしそうならば、やはり彼を知る人間を探すべきだろう。
 こんなジレンマを抱えるのは我ながらおかしいと思う。
 でも、それほど彼の問題は手に余る問題なのだ。
 神の癖に人ひとり満足に助けられない、とヘスティアは自分を恥じた。

「流石は我が女神!貴重なアドバイス、確かに受け取った!」
「ははは……いいんだよそんなこと。ファミリアなんだから甘えなさい!」

 だからこそ、リングアベルの笑顔を見る度に――小さく心が痛む。

「俺は甘える
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