第五話 第一層フロアボス攻略戦
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ら階段をのぼっていく。
キリトを遥かに上回るヘイトをその身に受けながら。
奇しくも、気づかないうちにアスナはリュウヤと同じ言葉を口にした。
「最ッ低……!」
「よっ、少年。黄昏てんのかい?」
「……リュウヤ、か」
第二層の景色を見つめながらうずくまっているキリトにリュウヤは明るく話しかけた。
「おお……こりゃ絶景ですな〜」
「……」
「これ独り占めとか、さすがは《ビーター》さん。やること違うねぇ」
「……!」
思いっきり、胸に剣が刺さる。今一番気にしている単語をなんの躊躇もなく嫌味に使ってくる。少しはデリカシーを持って欲しかった。
ふるふると湧き上がる怒りを拳に集中させていると、肩にポン、と優しく手が置かれた。
「大丈夫、気にすんな。お前一人が抱え込むようなもんじゃね〜よ」
手は大きかった。肩に置かれているだけだというのに、全身でその大きくて暖かいぬくもりを感じられた。
それは父性のぬくもり。
母性では感じられない、力強く、かっこいいぬくもり。
父を持つ子が、親父の背中を見て育つのは、親父のカッコよさに惹きつけられるからだ。
そんな年長者の心遣いがキリトの仮想の体に染み渡る。視界がぼやけてきた。ほとんど泣きそうだ。
「それに俺も案外ヘイト稼いできたからなぁ。これで仲間だ」
はっはっは、となぜか誇らしげに胸を張って笑うリュウヤ。
それがおかしくて、つられてキリトも笑った。
ひとしきり笑ったところで、リュウヤは親指を立てて言った。
「心配すんな。お前が孤独になるのはもう決められた定めだろうけど、いつか必ず、お前の心を癒してくれる奴が現れる」
元気でな、と告げてリュウヤは一足早く主街区へと向かっていった。
キリトは思い出す。今日一日の彼の表情を。
時に笑い、時にふざけ、時に叫び、時に怒り。
一貫しない彼の感情表現や口調。
そして、無理やりスイッチをした時のーーー機械のように冷たい瞳。
一体、彼はその胸の内になにを抱いているのか。
キリトは彼の背中を、彼が見えなくなるまで見続けていた。
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