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乱世の確率事象改変
飛龍舞う空に恋の音
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だ。

「今の孫呉は甘い。これに美周嬢が対応していたなら……“民をある程度の期間見捨ててでも、ねねと飛将軍の二人の居場所を特定することに時間と人員を割いたはず”なのです。
 一番最初の出鼻を挫かれたとしても直ぐに対応出来たはずなのです。なのに敵は……孫策と周瑜が居ないことで目の前にある命を見捨てることなど出来なかった。故にねね達はこれだけ上手くことを運べているのです」

 だから、ねねは呆れていた。
 優しいのはいいことだ。民を救うのは確かにいいことだ。それは為政者として当然であろう。
 しかし……綺麗な戦の在り方を台無しにされてしまえばこの通り。大徳として民を救うことをある意味で義務付けられている孫呉のモノ達は、姉の不在に姉の名を貶める行為は出来ない。
 せっかく取り戻せた自分達の土地を傷つけられることを看過出来ない、見過ごせない。

 さらにねねは、孫呉の血への期待を引き下げる効果も狙っているのだ。

『やはり小覇王が居なければ救われない』
『やはり美周嬢が居なければ誰にも勝てない』

 民にそう思わせたら勝ち。
 次世代の王や軍師に期待を持てなければ、長きに渡る安寧など永遠に来ない。躍起になって姉を追い抜こうとすれば綻びが出て、多くの隙を作ることが出来る。
 
 遠い視点を以って打ち放たれたこの不可測は、孫策が死ぬことでやっと機能する甘い毒。
 孫呉の天下統一など絶対に描かせず、孫呉を大陸でも下の位置付けに縛り付ける為の、復興されるであろう漢を見ての策なのだ。

 それでも、全ての時機が噛み合い、劉表という賢き悪龍が、孫策と周瑜二人の英雄を縛り付けたからこそ行えた……と、ねねは思う。
 自惚れは無く、慢心も無い。掻き乱すことを目的としている彼女は、優位にことを進めているからと余裕を持つことも絶対にしない。
 自分の能力がまだ足りていないことも彼女は把握していて、誰よりも勝っているなど思うはずも無い。

 何故なら、彼女の隣には……本当の意味で頂点に立つ存在が居るのだから。

「飛将軍と飛龍隊による遊撃だけがこの作戦での矛なのです。ねね達が動くから奴等はのこのこと釣られて出てきて、ゴミクズ共が気兼ねなく暴れられるのです。ねね達が休んでしまっては、全てを台無しにしてしまうのですよ」
「……呂布様は……大丈夫なのですか?」

 ふとした問いかけに、ねねの表情が悲壮に歪む。
 どれだけ彼女が恋のことを想っているか、知らぬ兵士達では無い。
 戦いに赴くだけの暴力、人形のように人を殺め続ける暴風、ソレを笑顔で見送った後に……必ず彼女は泣きそうになりながらその背を見つめているのだから。

「……正直に話してあげましょうぞ」

 ぽつりと、寂しげな声が漏れた。何を、と思う前にねねの口から言葉が流れ
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