飛龍舞う空に恋の音
[16/17]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
――……曹操と黒麒麟ってどんな人なんだろ。確かに真名を捧げさせるのは怖いことだけど、“大罪人の袁紹の命さえ助けた”って事を皆はどうして見てあげないのかな……。
美羽の命が救われたことで他とは違う視点が出来上がった小蓮は、敵であるモノ達の気付かない二人の姿を見抜いていた。
興味が芽生える。孫家では出来ない命の救い方をする者達に。
ただ単に命を救うだけでなく、そのモノを生まれ変わらせるような新しい風を吹かせるモノ達に。
このままでいいのかな、と彼女は内心で呟いた。自分の家の在り方と、その者達の在り方の差異にズレを挟まれて。
不意に、そのまま思考に潜りそうになった小蓮の耳に、他の足音が入ってきた。
気付かれぬよう、悟られぬように音を忍ばせて壁に近付くこと一歩。
きっと内部の情報だろう。こんなに焦った足音を鳴らしているのだ。好転したか、はたまた……何か悪いことでも重なったか……。
中から聞こえてきた情報は、彼女の……否、その情報を聞いたモノ全ての頭を疑問で埋めることとなった。
「ほ、報告致します! 旗すら掲げぬ軍が南方に急遽出現! その数、約五千! 騎馬で構成されたその軍は白い馬に跨る将を先頭に……行く先々の村や街で、“劉表軍を”悉く喰らって、こちらの城へと向かっている模様!」
†
白い羽扇がひらりひらり。
宙に漂わせる所作はまるで舞いのように緩やかに。命のはかなさを憂うように。
愛らしい体躯に金色の髪。灼眼はつい最近まで生きていた悪龍のように燃えていた。
微笑んでいるはずなのに絶対零度の如き冷たさを纏い……その少女――――朱里は崩壊した村々を見やっていた。
「ふふ……」
漏れた笑み。大きな感情が其処にはあった。ケダモノに堕ちたモノ共が喰らった残骸を見据えて、胸に溢れるのは怒りと哀しみ。
こんな理不尽を無くしたいから、彼女は今の主の元へと駆けたのだ。
目の前で殺される人々が、目の前で作り上げられる地獄が……只々許せなかった。
笑いは自嘲の声だった。
この状況は読み筋の一つ。彼女が生まれ育った荊州の在り方も、智者を追い求めた末に水鏡塾の塾長と袂を分かった劉表の見ていた先も……朱里が一番よく分かっていた。
だから、“此処まで行動を遅れさせなければならなかった自分”を……内に飼う黒い獣が出した策を是とした偽善者な自分を……嘲笑った。
「ごめんなさい……今はまだ、救えないんです」
冷徹に、冷酷に、彼女は己が主の為にと策を出す。それが例え主が飲み干しきれない程の策であろうと、汚れた部分は自分が背負えばいいのだ……そう考えて。
もう間違えない。あの時、半身のような親友と
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ