飛龍舞う空に恋の音
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……としか、彼女達には考えられなかった。
苦悶に歪む唇を震わせる明命を見て、それが本当に起きていることなのだと、蓮華は理解する。
それなら、割り切るしかない。起こったことは起こったことだ。呑み込んで今何をするべきか考えなければならない。王である彼女だけは、先を見据えなければならないのだ。
蓮華の纏う空気が変わった。
先を歩き続ける姉がおらずとも、隣に立つ誰かが居なくとも、彼女は王としての階段を上り続けていく。
「教えて明命。曹操はどうやってそんな力を手に入れた?」
――方法があるのなら、敵のモノであろうと使ってやろう。
現状を打破する力が欲しい。蓮華が求めるのは、自分達の大切を守り続ける力だ。それが例え敵が使っていたナニカであろうと、自分達のモノとして取り込み、強くなってみせよう、と。
出来なくともいい。知るだけでいい。いつかは使えるかもしれない。そうして積み上げて積み上げて、自分の力と為せばいい。
だがしかし、望んでも意味は無かった。慄く唇から零れた情報は……蓮華が呑み込める範疇を超えているのだから。
「曹操だけじゃないです。黒麒麟と曹操が二人で……袁紹を殺さずに名と字を奪い、こ、この世に生きる全ての者達に袁紹の真名を開示しました。民の為に生き、民の為に全てを捧げ、民を救う為にのみ動く……え、えん……っ……え、“袁麗羽”という王を、奴等は作り出し……袁家の軍をそっくりそのまま取り込んで、え、“袁麗羽”に袁の血筋の虐殺を命じ、河北制圧に乗り出しました!」
蓮華と亞莎の二人は有り得ない方法に言葉を失い、全ての思考を止めるしかなかった。
既存常識が壊される。
覇王と黒き大徳の行いは、彼女達にとってそれほど大きな衝撃だった。
†
隣の部屋で聞き耳を立てていることは誰も知らない。
執務室はもう一つ。少女は一人、姉達が久しぶりに話す声を聞いていた。
何か情報は無いか、何か新しい報せは無いか、自分の友は生きているのか死んでいるのか、外では何が起きているのか。
揚州の人間が万を超えて死んでいる現在、彼女――――小蓮とてその身を粉にして働いていた。
七乃や紀霊に教わった執務能力は、猫の手さえ借りたい孫呉の者達にとっては間違いなく有益で、それを使って貰うことに躊躇いも迷いも無い。
ただ、どれだけ働いても姉達は情報を与えてはくれなかった。
分かっている。それは優しさ。大切に想ってくれているからこそ、姉達は小蓮を傷つけたくなくて情報を教えない。
きっと姉達も働き詰めで思考が鈍っていたのだ。いつもならこんな些細な不手際……小蓮に聴こえるような声で外部の動きを話すわけがないのだから。
もう遅い。彼女は聞いてし
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