彼女はアイスを咥えていた
[2]次話
それはとある夏の事だった。
家の近所にある寂れた神社で、ヘッドホンを耳に当て、音楽を聴いていた。
素朴な音が、耳に流れ込む。
昔から、激しい曲は好きでは無かった。
周りがアニソンやロックを大音量で流している中、僕は1人隅っこでこのヘッドホンを付けてマイナーな歌手の静かな曲を聴いていた。
「ふむふむ、それで?」
小・中学校と、特に目立たずに生きてきた。逆に言うと、目立たなすぎて友達が誰一人として作れなかった位だ。
でも、目立って目をつけられるよりはマシだろう。僕はそのせいで虐められた人を大勢見てきた。…勿論関わりたくないから、見て見ぬ振りをして生きてきたのだけど。
「ほぅ、つまり君は今まで逃げてばかりいたのか」
「そう。でも逃げるってのも人生における選択肢にはあるだろー………って
誰?君」
何時の間にか、僕の隣には白いワンピースを着た、大人しそうな少女がいた。
口にレモン味のシャーベットアイスを咥えており、茶色い大きな瞳でこちらを見つめている。
まるで天使の様な少女だ。天使を見た事はないけれども。
「でも、逃げてばかりじゃ始まらないんじゃない?」
「いや、話聞こうよ…
君は誰なの?」
2度目の質問をぶつけると、彼女はしょうがないなという顔をして、そして一言ぽつりと呟いた。
「………零」
……苗字は?と思ったがまあいい。
名前が分かっただけでも充分だ。
それにしても、さっきとはうって変わって静かになったな。
「零ちゃんっていうのか
僕は夏樹っていうんだ」
僕も名乗る。ちゃん付けしたのが気に入らなかったのか、彼女は少しむっとした顔になる。
「………零でいい。レイ、で」
彼女……いや、レイは膨れっ面をしてそう答える。
「はいはい、僕は夏樹ね。呼び方はナツキ君、でいいから」
「……思い切り呼び捨てしてやる気だった」
おいおい、この子かなりパンチ効いてないか?
「…………で、話の続きは無いのか?」
…どうやら彼女は、僕の話の続きをご所望らしい。
しょうがないな
「んじゃ、話してやるよ…続き」
[2]次話
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