鋏と花第一話 部活
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始業式が終わり、教室に戻る。と、教室の前の廊下のど真ん中に人垣ができている。それもほとんどが女子である。まあどうせ真ん中にいるだろうやつはわかっている。
人垣をほとんど無理やりかき分け、真ん中にたどり着く。案の定、人垣の中心にいたのは、タチバナだった。
「さっきスピーチしてたよね!さすが、すごいね」
「あの、よかったら一緒に午後…」
「ちょっと勝手に約束とりつけないでよね!私だって―」
当の本人はというと、なんとも言えない複雑な顔をしていた。
しかたがない。助け舟をだしてやるか。
「おい、そこに溜まってんな。教室に入れねーだろが。タチバナも困ってんだから散れ散れ」
手で、しっしっという仕草をすると、仕方なしに、という感じに人垣は崩れていった。
「あんがとな、サクライ。今年もおんなじクラスみたいだから、よろしくな」
タチバナが、にっと笑う。こいつは、友達がほとんどいないから、こういう風に笑うのは俺に対してぐらいしかない。
突然だが、俺はこいつが好きだ。誤解が無いよう言っておくが、ホモとかそういうのじゃない。確かにタチバナは男子制服を着ているが、れっきとした女子である。ただ、いろいろと事情があり、仕方なく着ているのだ。それについては別の機会に。本当は女子であることを知っているのは俺だけだ。
教室に入り、出席番号順に座る。位置的に俺とタチバナが一番後ろの席で隣になる。去年もそうだった。
それからのHRは担任のありきたりな挨拶と自己紹介、委員決めで終了した。ちなみに言うと、俺もタチバナも委員にはならなかった。ただ単に面倒だっただけだが。
しかし、俺は明日の授業で使うらしいプリントを大量に職員室まで運ばされている。委員長に無理やり手伝わされたのだ。
職員室に入ってプリントを担任の机に置き、そそくさと出る。
「疲れたし、ジュースでも飲むかね…」
現在地から一番近い昇降口前の自販機に向かう。しかし、その自販機には先客がいたようで、そいつはずっと自販機前に突っ立っている。
近づいてみると、そこにいたのはタチバナだった。
「タチバナ?何してんだ?」
「あ、ああ。サクライか。いや、ジュースを買おうと思ったんだけど、財布、家に忘れててさ」
だが、財布を忘れたからと自販機の前にたたずむものなのだろうか。普通なら諦めてさっさと帰るはずだろう。…まさか。
目の前にいるタチバナは、目をキラキラさせてこっちを見ている。
「はぁ。しゃぁねぇな。奢ってやるよ…。何がいいんだ?」
「わ、ありがとな!んじゃー…コーラ!」
よりにもよって一番高いやつを選びやがった。まぁ、奢るといったのは俺だし、ちゃんと買ってやる。
冷たいコーラを与えられたタチバナは、飲みながら嬉しそうに話しかけてきた。
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