Episode of Tabasa 臆病者-オリヴァン-part1/変心する嫡子
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い方をしたのか、その理由を明かした。
当時、身寄りをなくした彼女は親戚の紹介でこの屋敷のメイドとして雇われた。田舎から出てきて右往左往するばかりの彼女は失敗を続けては同じメイド仲間や先輩たちの怒りを買い、オリヴァンが泣き虫呼ばわりされているように、彼女もまた『のろまのアネット』と馬鹿にされていた。毎日が辛くなり、行く宛てが無いとは言え屋敷を出ようと考えた矢先、彼女はついに最大の失敗として、屋敷の棚に飾ってあった壷を割ってしまった。その壷は彼女が何年稼いでも支払えないほどの大金で購入されたもので、アネットが割ったことがバレてしまえば…。彼女はいっそシレ川に身投げしようと恐ろしいことまで考えた其の時…。
「お坊ちゃまが、自分が割ったことにするから気にするな…と仰ってくださったのです。ロクに友人もできなかった私にとって、お坊ちゃまの優しさはまさに光でしたわ。おかげで仕事にも慣れ、失敗することもなくなり、友人も数える程度ですができるようになりました。今の私があるのも、お坊ちゃまのおかげなのですわ。
ですから自分に誓いました。たとえ味方がいなくとも、私だけは坊ちゃまの味方であり続けようと」
「………」
微笑を浮かべながらオリヴァンのことを、どこか熱くも語っているようにも見えるアネットを見て、キュルケはわずかに笑みを浮かべだした。
「もしかしてあなた…オリヴァンに恋してるの?」
キュルケから直球の予想外な問いを聞いて、アネットは思わずボウッ!!と顔を真っ赤にしてしまった。
「そ、そそそのようなこと!!平民でもとは田舎娘の私ごときが貴族のお坊ちゃまになんて、恐れ多い!!」
あたふたと慌てて否定するその様はかわいらしいものだった。身分違いの恋、まるで物語にあるようなシチュエーションは恋多きキュルケにとって見逃しがたいものだった。
「ヒューヒュー!なんだよあのぶきっちょ、こんなかわいこちゃんのハートを射止めてやがってたのか!やることやりやがって…憎いぞこの野郎っ!てな」
グレンまで悪乗りしてアネットをからかい、さらに彼女を赤面させる。
だが身分違いの恋とは最終的に互いの別れを促すものでもあることが必然。身分とはずいぶんとまぁ厄介なものだと思う。彼女の故郷ゲルマニアでは平民も高い金さえ払えば貴族になれる国だ。故に野蛮扱いされているものの、それは同時に貴族と平民の壁がほとんどない。だから身分違いの恋も間違いなく自分たちの知らないところで頻繁にあることと思う。できればアネットには好きな人と結ばれて幸せになってほしいところだが…。
(けど、今のオリヴァンは正直お勧めできないわね…)
身分云々以前に、今のオリヴァンは男としては魅力を感じられない。それがキュルケの見解だった。寧ろ結ばれたところであのオリヴァンが原因で家庭崩壊を起こすフラグが見える。
「かとい
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