2つの人種
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かれた文字に目を走らせた。すると目を見開き、そのまま硬直した。
「ハーヴィ家は、ご存知ですね?」
「あ、ああ…。ま、まさか………。」
「…父様に僕が魔導師と間違えられたと知られれば、どうなりますかね?」
少年は笑顔で、しかし威圧を掛けるように厳かに言った。すると。
「……………こ、これはこれは。大変失礼いたしました!」
「我々、御子息はおろかハイベルク殿にお目にかかる機会が少ないもので…。」
「そうでしたか、あなたがハイベルク殿のご子息様の……。」
先程とは打って変わって、恭しく少年に一礼した。そして少年に名乗る隙も与えないままに、
「で、では我々はこれで。貴重なお時間を申し訳ありませんでした。」
と、素早くどこかへ行ってしまった。少年は同じく笑顔で見送ると、深々と溜息をつきながらメモを破った。
「…さすがに地主の息子はきついかなと思ったけど。人間って、権力に本当に弱いね。」
呆れたように破った紙を空へ飛ばすと、指を鳴らしてそれらに火をつけた。
「読んだ者を軽い催眠にかける書物、通称『催眠の書』……の一部を写したもの。これ、さすがに全部写すのは大変なんだよね。」
無表情で風に流される灰を見届けると、再び魔導師の少年は走り出した。
騎士に声を掛けられた今、人間の国に長居している暇など、ない。
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