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バーチスティラントの魔導師達
2つの人種
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は、店内に流れていた空気よりもさらに冷たい気が流れ出ていた。表紙は濃紺に白の縁取りという、これまた寒々しい配色である。
「『結氷の城』、通称『氷結の書』。どんな書物か、試しにほんの少しだけ開いてごらんなさい。」
そう促され、少年は本当に少しだけその本を開いた。その瞬間。
「痛いっ!?」
左手に突き刺さるような痛みが走る。何が起こったのかと自身の左手を見ると。

少年の左手は、かちこちに氷漬けされていた。

「…………………!!」
恐怖で身を凍らせた少年に、女性は準備していた紙を少年の左手の上に置く。
そしてぶつぶつと何かを呟くと、氷は瞬時に昇華した。
「ふふ、これが『氷結の書』の名の由来よ。読んだものを凍らせてしまう、恐ろしい書。」
「…いろんな意味で、凍りました。ありがとうございます。」
笑顔の店主に、苦々しい表情で返す。
「『間隙の書』を持ってきているのでしょう?それにしまって持って行きなさい。」
「はい。………いつもありがとうございます。」
「いいのよ。イライヤとは何年も前からの付き合いだし、あなたたちオーリエラント家はいつも大量に書物を買っていってくれるから。それに………。」
一度女性は言葉を切ると、店内に目を向けた。どうやら、客が入店したらしい。
「…あのような人間には、売れないしね。さあ早く。」
少年は慌てて蒼いコートの内ポケットから1冊の本を取り出すと、適当なページを開いて先ほどの本に押し付けた。すると濃紺の本は吸い込まれ、姿を消した。
満足そうに少年が本を閉じると、すぐにしまって店の裏口へ向かった。
「じゃあね、エルミアさん。」
「ええ。次来た時に時間があれば、何かお菓子をあげましょう。」
そう挨拶を交わすと、少年は走り出した。



「……………おい、そこの坊主。止まれ。」
そう声を掛けられ、少年は立ち止まり振り返った。後ろにはいつの間にか、白い重装備の人間が立っていたのだ。
「お前、この辺じゃ見ない顔だな。服装といい髪色といい。」
「我らが白騎士なのは分かるな。なら、餓鬼でも目的くらい分かるだろう?」
このあたりに住む人間は大体が茶髪や黒髪で、服は手作り感溢れる簡素なものである。だがしかし、金髪の少年は新品に見える白いタートルネックのインナーに茶色のスラックス、さらに淵に金のラインが入った蒼いコートを着ていた。場所が場所なだけに、その容姿は異質を放っていた。
「…僕が、魔導師だと?」
疑われるのも無理はない。その裕福そうな見た目に、人間の誰かが報奨金目当てに通報したのだろう。少年にとって、これは初めてのことではない。無論、解決策ぐらい持っている。少年はポケットからメモのようなものを取り出して騎士たちに見せた。
「なんだこれ。これは………。」
騎士たちは集まって、メモに書
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