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バーチスティラントの魔導師達
2つの人種
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例えばここに、2人の人間がいたとする。
1人は特技も趣味もなく、ごくごく一般的な人間。
1人はあることに特化していて、その実力は世界レベルである人間。
もしあなたが前者であれば、相手に羨望と嫉妬の目を向けるだろう。
もしあなたが後者であれば、相手に憐情と侮蔑の目を向けるだろう。



この世界<バーチスティラント>には、”人間”と”魔導師”が存在する。
人間は特に何の能力も持たない、何の変哲もないヒトである。
自分たちで国や集落を造り、おだやかに自営している。それが"人間"。
一方魔導師とは、そんな人間たちの常識を外れた力を持つ人種である。
天候や自然を操り、動物と話し、人形に呪いを掛ける。それが"魔導師"。
彼らは互いに敵対し、いがみ合っていた。
人間が造った国への魔導師入国禁止は勿論、店にも「魔導師お断り」の張り紙が非常に多い。
魔導師は人間を避けるために、国や村から離れた森の中や孤島に住まいを置いていた。
されど、魔導師達はそれでは生命活動的に問題が出る。故に、時折身分を隠して人間の国に入国し、食料や生活必需品を買い求めていた。


「………おい、聞いたか?昨日の酒場の出来事。」
「ああ、酔っぱらって口論になった魔導師が店吹き飛ばしたって話だろ?」
「ほんっといい迷惑だよなぁ!あいつら、自分で何もしないくせにしれっと必要なものだけ持ってってるって話だぜ。酒場のマスターだって、あくせく働いてようやく貯まった金で店建てたってのによ。」
「全くひでぇ話だ。あいつらには常識も知恵も何一つないのかね。」
「はっは!入国するための知恵があるじゃねぇか。魔法に頼りきりの魔導師様にはよ!」
「人任せで、自分勝手。おまけにケチと来たもんだ。うは、会った時のこと考えると寒気がするぜ。」
「バーカ、今は夏だろ!?」

吹き飛ばされた酒場の跡地と思しき前で、体格のいい男2人が大声で笑いあう。
その声の大きさに身を震わせながら、金髪の少年は市街を走っていた。
やがて目的の書店の前にたどり着くと、息を切らして入店。次いで店主を呼んだ。
「エルミアさーん!こんにちはー!」
「………あら、アレン君。1週間ぶりかしら。」
「いえ、6日ぶりです。」
「よくできました。こんな暑い中ご苦労様ね。」
店内に空調設備は無いのだが、不思議と冷涼な空気が漂っている。他に客はおらず、外とは裏腹に店には穏やかな時間が流れていた。
「あの、母さんから話が行ってると思うのですが……。」
不安そうに、なぜか躊躇い気味に女性店主に尋ねる。すると店主は笑顔で、
「ええ。こっちにいらっしゃい。店に並べていないだけよ。」
と手招きして少年を店の奥に呼んだ。

「イライヤが言ってたのは、この書のことよ。」
そう言って女性が差し出した本から
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