天と人を繋ぐモノは
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月からの提案に一番驚いたのは劉協本人である。
帝への敬意を崩さないというのは、ある意味で当然と言えば当然で、きっと何を言っても聞かないのであろうと半ば諦めていた。
華琳や月でさえ彼女と親しげに話すことは無い。崩して構わないと命じたとしても、彼女達もそれだけはと拒否したに違いない。
それなのに、である。
「あなた、あだ名を付けるのは得意でしょう? それならこの子にも付けてあげなさい」
「そうは言うが……ゆえゆえとかえーりんは黒麒麟の時だったし、ひなりんだって季衣が呼んでたからだぞ」
「あなたが知ってる外の国の言葉でも構わないのよ? 似合った意味とかあるでしょうに。ほら、綺麗な髪から名付けたり蒼天から取ったり」
「あのなぁ、さすがに似合わんよ。白金でプラチナとか……うん、漢字じゃないとしっくりこねぇわな。お前さんだって嫌だろう?」
「ふむ……余の髪の色は“ぷらちな”、と言うのか。中々に愛らしい響きじゃの」
「私も可愛いと思いますが……りゅ……協ちゃんのあだ名にはちょっと」
「ええ、聞いてみてなんだけどなんか違うわ、やり直し。ねぇ、協は何がいいかしら?」
「そうじゃな……空で探してみるのがよいぞ」
「空っていってもなぁ……」
お菓子を食べながら、お茶を飲みながら……緩やかに流れるこの一時で、劉協に向けられる言葉は年相応の少女を扱うモノばかりなのだ。
月はまだ一寸慣れていないが、彼と華琳はもう全く気にしていない。
一度崩してしまえば二人の順応は早く、本当に一人の少女と話をしているだけ。
馴れ馴れしいはずなのにそれが新鮮で面白い。切り替わりが大きすぎたが、逆にこちらの方がしっくり来るのだから劉協は其処に一番驚いていた。
彼女とて、自分が帝として相応しい姿を人々に見せなければならないことは理解している。
だがこのような……自分一人だけで眠る寝台の上や、肉親たちと共に居た時間と同じモノが出来上がるとは思わなかった。
綻ぶ頬は胸の内のある感情を表している。本当に隔離された幻の空間でだけは、一人の少女で居たかったのだ。
許されることが有り難かった。誇りを穢すことなく、自分の役割を貶めることなく、帝と劉協という二つで一つの彼女そのモノを尊重してくれるこの空間に、彼女は歓喜していた。
「普通に協でいいんじゃねぇか? 此処だけなんだから」
うんうんと唸っていた彼は、やはり空でも違うと否を示す。
彼の知っている外来語ではこの世界の人に合いそうにない。そう判断して。しかし……
「ダメよ。時間が掛かってもいいから決めなさい。そして……しっかりと読み解きなさい。私と月のしたいことが何かを」
華琳が切って捨てる。最後に付属でどんな意味が含まれているのかと問うた。
わざわ
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