天と人を繋ぐモノは
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が出来たなら、平穏な世が作られる時に叫んでやろう。
口の中だけで呟いて、彼は誰にもソレを明かさない。
人の身を外れて天を目指す王の二人と、元から天として生を受けた劉協に伝えたい言の葉があった。
そして、この世界に生きる人々に向けて言いたい言の葉があった。
心に留めた。
異物な彼だから言えることを。
緩やかな風に髪を撫でられて、夕暮れはまだ遠くにあると気付く。
せめてもう少しだけ帝を少女でいさせてやろうと、彼は劉協の頭をぐしぐしと頭を撫でて話を変えた。
むくれる少女と呆れる覇王、白銀の乙女は穏やかさに頬を緩めた。
昼下がりの青空の下、其処には確かに人しか居なかった。
†
劉協との謁見から幾日。麗羽達を従えたことが良かったのか河北の反発もあまり見られず、予定していた動きを少しだけ崩してもいいこととなった。
ちなみに幽州については麗羽への罰と白馬義従の掌握が効いているらしく、麗羽の生存についても反発されることは無かった。
七乃の予定通り美羽は隠されたまま、袁家最後の生存者として麗羽が河北を牛耳っている現状。
彼としてもあとひと月、ないしは二月程は街で過ごすつもりだったのだが……広い支配地域にも関わらず安定しているのなら行動しても問題無しと見た華琳は、三つの場所に文を送った。
送った場所は西涼、揚州、益州である。内容は……挨拶の使者を向かわせる、と。
返答など待たない。待つ必要も無い。それぞれに相応しい相手を選りすぐって送るのだから。
一番遠い益州に向かう彼が最初に出ることとなった。
出立の日、城の庭先での一服ももうすぐ終わる。詠は先に兵達の兵糧の準備へと動いていた。
使者として赴くには兵など要らないとは言え、護衛の兵士を連れて行くことにも意味がある。
「さてと……」
一言。弾む声を上げた彼は荷物を肩に引っ掛けて立ち上がった。
見上げる視線は幾多もあった。
それもそのはず、記憶がいつまで経っても戻らない彼が、前よりも大きな可能性を秘めた賭けをするのだ。もし、今の彼が消えてしまったら……そう考えるモノは曹操軍の中で多い。
「そろそろ行こうか……猪々子」
「んん! ひょ、ひょっほ待っへあにひ」
「おまえ……」
かっこつけたつもりが後ろに居た猪々子の状況把握が出来ていない。応、とでも返事を返して貰えれば少しは決まったというのに、口にお菓子を詰め込んで喋られては締まらなかった。
クスクスと笑い声が漏れる。呆れの吐息も漏れていた。
「秋兄って戦場以外だと締まらないね」
「まあそう言ってやるな」
「戦場でも無駄にキザったらしいことしよる
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