天と人を繋ぐモノは
[7/13]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
を打ち倒して解放するという理由で。
「人はそんなに簡単じゃない。誰しも意地があって想いがあって欲がある。あなたが私に不満を抱いていたように、あなたが月のことを大切に想っていたように、皆それぞれ譲れないモノや抵抗心や思いやりを持っている。
あなたに見捨てられた人々は、これから先にあなたを慕ってくれるかしら? 黒麒麟のように欲しいモノがあって友を見捨て、敵を殺していく事とは訳が違う。あなたが行うべきは大陸を包み込むことであって、敵を倒すことでは無いのよ? だから、あなたは偏りを持った傍観者。肩入れしてしようと考えてしまう今はまだ、ね」
秋斗と劉協では民の向ける意識の格が違いすぎる。
その点を華琳は上手く突いた。下から這い上がってきたモノと常に上に立っていたモノとの差異を説かれて、劉協は唇を噛むしかなかった。
「そんな傍観者のままじゃダメなのよ。あなたは天として、人ならざるモノとして人々を裁定しなくてはならなくなるのだから、公平なる裁定者にならないと。
自分以外の全てを下と見ながらも優越を挟むことは絶対にしてはならない。それでいて全てを心より慈しまなければならない。それこそが帝が人という種の上に立つ天足る理由。
故にあなたは、私に肩入れしてはいけないわ」
狭い天にすることなかれ。都会の空か、井戸の中から見上げる空か……切り取られた空は寂しく哀しいモノだ。
夜天に多く包まれる場所は寒くもなろう。寒いと暖を取りたくもなる。暖かい場所を嫉妬し、奪おうとするモノも居るだろう。
民は大抵が理不尽だ。弱い心には悪感情が忍び込む。
『どうして我らは救われない。どうして奴等は光を受ける。同じように漢人として生きているのに、何故に天は我らを見放すのだ……』
縋るモノを失った人々は堕ちることもあろう。其処に別の大きな光を与えられてしまうと、民はそのモノに希望を見出し、元からあった光を消そうとする。
そうして末端から壊死し、敵対の新芽を育てて行き、いつか彼女の治める大陸を腐らせる。
いつまで経っても乱世は終わらない。仮初めの平穏を求めて、本当に遠くの平穏はじわりじわりと腐れて行く。
皮肉なことだ。劉協という少女は人々に救いを与えたいのに……天であるが故に誰かに救いを与えてはならない。
「難しいわよ、私があなたにそうあれかしと願っている天は、ね」
悔しさと無力さで震える小さな拳を見やりながらも、華琳は優しい言葉など掛けはしない。
理解しているなら聡明であれ。もっともっと大きく、もっともっと広く深い蒼天に……。
酷ではなかろうか。一寸そんなことを考えた彼だが首を振る。自分如きが掛けるべき言葉は持ち合わせていないから、と。
ただ、この世界の異端である彼は彼なりに、劉協に話せることが
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ