天と人を繋ぐモノは
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い輩なわけが無い。
誇りを失った覇王に価値は無い。矛盾した覇王に人は付いて来ない。大切に守っている矜持を曲げてまで得た幸せでは、彼女も納得出来はしない。
それはもう、皆が着いて行こうと決めた覇王では無いのだ。彼女が在りたい自分では無いのだ。
華琳は劉表とのまほろばを思い出していた。
後悔なんざするかよ、と彼女は語った。命使い果たしても自分の思惑の為に生きた彼女は……きっと華琳と同じ想いだった。
自分が進んできた道は此処にしかない。選んだ結果で諦観した命に唾するような行いだけは、あの悪龍でさえしなかった。
先を見る彼女達だからこそ、過去の想いを穢すことだけは絶対にしない。人の想いを汲めなければ、人を導く王になどなれないのだから。
「……想いの華が咲き誇る世にするには、人が命を賭けた想いを繋がないような、そんな茶番劇では長い平穏など作れるわけがない。
誰かが言うでしょう……『曹孟徳は帝をかどわかしたから勝てたのだ。見よ、アレは虎の威を借る狐だ』……なんて」
話を変える。劉協も読み取れたならもういいだろう。現実的な話をすれば、聡明な帝は苦い吐息を吐き出した。
「しかし……民が苦しむ声は……もう聞きとうない。洛陽は燃えたぞ、曹孟徳。余があの時一声でも掛けておけばまだマシじゃったろうに。
過ちを繰り返すは愚の骨頂。故に余は……余にも、何か出来るじゃろう?」
天たるからこそもどかしい。
帝の威光を使えば何かしら出来ることがあるはずなのだ。現時点で華琳と共に戦えば、思い描かれている馬の一族との激突は無くなるかもしれない。
完全には出来なくとも、離反や裏切りの策に使える可能性も高い。
彼女は、民の安寧の為に何かしら働きたかった。
「協? 平穏になるなら、救われるならどんな方法でもいいだろう、と考えることが出来るのは……あなたが“偏りを持った傍観者”だからよ」
ぴしゃり、と華琳は切り捨てた。
傍観者……その言葉に劉協の顔が悲壮に沈む。
「余が……偏りを持った傍観者……じゃと?」
「ええ、あなたは偏見に染まった傍観者。人の想いの強さを知らず、ただ目の前の民が平穏ならそれでいいと感情を向けてしまう未完成の天。天が介入してくれたら救われる……なら、敵はどうなる? 愛すべき民の一人一人であるのに、天がそのモノ達のことを見捨てているに等しくない? どの王であっても自身の描く世界の為に戦っているというのに」
ハッと、劉協の顔色が驚愕に変わった。
彼女が愛すべき民は生きるモノ全てだ。なのに彼女が何処かに付くということは……それ即ち敵を人として見ないことに等しい。
敵対勢力の頂点が偽帝であるならばいい。正当性を以って戦える。偽りの天に誑かされた哀れな民を、偽物
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