天と人を繋ぐモノは
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は燃えて消える命がある。天の一声、天の一振り、天の一感心だけで全てが終わるなら……彼らは何故戦う必要があったのだ……と。
チラと秋斗と目が合った。
推し量る瞳は隠されたモノに気付いているかと問いかける。
――相変わらず……人を試すのが上手いな、お前さんは。
分かってるよ……お前はさ、覇王と、場合によっては天をも殺せる民が欲しいんだろ?
強い国を作る為には、強い王が必要だ。そして強い民が必要だ。
天の一声、そして覇王の暴走にさえ抗えるような強い人々が……彼女は欲しい。間違いを正せる人間を多く作り上げることが彼女の望み。
彼女の心の声が聴こえるようで、秋斗と……そして月は目を少し伏せた。
――天に縋ってどうするの? 天に求めてどうするの? 与えられるのをただ待つの? 皆はそうして生きている? 自分だけが特別扱いされる事はそれほど幸せ?
苦痛の中で理不尽に弄ばれ死んだ子供は何故救われなかった?
賊徒に堕ちてケモノとなるしかなかったモノの幸福はどうして崩された?
飢えの果てに同胞を喰らってまで生き延びるモノ達には、どうして何も与えられない?
覇王の瞳には、哀しみと怒りがあった。慈愛と覚悟があった。
深淵に渦巻くアイスブルーを覗き込んだ劉協はゴクリと生唾を呑み込む。まだ子供とはいえ、劉協は聡い。故に華琳の言葉に隠された意味に気付く。
――人が人であるならば、自分の道は自分で切り拓け。誰かが手を差し伸べることを否定はしないけれど……自分から救いを求めてどうするというの。
きっと誰かが優しければ救われる人もいることでしょう。けれども人は堕落し、弱きを虐げることもあるのだ。与えられれば調子に乗り、誇りを失えば誰かが理不尽を受ける。袁家や漢がそうして腐って行ったように。
誰かに与えられる幸せなんかで私は満足出来ない。否、与えられる幸せを享受してしまったら……誰に対しても、“胸を張って生きている”なんて言えないもの。そんな人生はこっちから願い下げ、覇王でも曹孟徳でも、そして『華琳』ですらなくなってしまう。
己が内にある情熱の業火は魂を燃やし続けている。
救われない命にも、諦観してきた命達にも、彼女は存在理由を示さなければ納得できない。
問おう。
もはや手に入らなくなった幸福があるとして、誰かが甘い言葉で華琳にソレを与えようと誘ったならば……彼女がそれを是とするか。
誇り持って命を使い果たし死んだ好敵手が死なず、そのモノとすら手を取り合える未来をやるからと言われて……彼女がソレを求めるか。
否……否であろうに。
自分が進んだ道に後悔を落として、過去を引き摺って生きるような彼女では無い。
前を見て、先のモノの為にと想いを紡いで世界を導く覇王が……そんな下らな
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