天と人を繋ぐモノは
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ずだったから、ダメだと言われることに嬉しさが湧く。
「変なところで喜ぶのね、協?」
「いや……こう、叶わぬことがあるというのはもどかしいが……それもまたよい。待つ時間も愛おしい」
「そんなにいいもんかねぇ?」
「協ちゃんには新鮮でしょうから」
彼や華琳、月には分かり得ない感覚。籠の中に居た彼女だけが、求めて与えられるだけの空しさを知っている。
自分から求めたことはほぼ無かった。それでも彼女にとっては、我慢しろと言われることすら楽しかった。
ふいと、劉協は聞きたかったことを思いだした。
ずっと聞かずに我慢してきた事がある。華琳が何故、蒼天を救わずに覇道を行き、劉協に深く関わろうとしなかったのか。先ほどの謁見では秋斗もそのような態度を取っていた。
ある一定の線引きを決して越えずに、何も与えず、何も求めない。
「のう……そろそろ教えよ曹孟徳。お主が余に関わろうとせんかったのは何故じゃ。徐公明も、余を戦の道具とせんのは何故じゃ。
策の一環にも使わず、此処におる余こそが天……そう人の世に示さぬのは……何故じゃ?」
質問は突然に。緩くなっていた空気が少しだけ冷たくなった気がした。
ふむ……と華琳は顎に指を一つ当てる。
片目だけ細めてからお茶を手に取り、ゆっくりとした動作でそれに口を付ける。
瑞々しい唇を舐める舌が、何かを食べようとしているように見えた。
「……協としての問いかけならば答えてあげる。
私の力で治めたいからよ。この……愛しく楽しい乱世を皆が願ってやまない平穏な治世に変える。天の力を借りて得る勝利に何の価値があるというの?」
細めた目が……冷たい輝きを放っていた。
気を抜いているとはいえ、劉協をして身が凍る程の覇気。叩きつけられる冷たさは、自分の敵に対して向けるモノに等しい。
「人であるモノ達の一番前で走り抜ける王として、私自身の力で乱世を治めるからこそ意味がある。これは私のわがままであり、誇りであり、意地。
借りた力で勝利を得ても私の心は、私の想いは満たされない。そして……私と共に戦ってきたモノ達の想いも報われない。
彼らは私を信じてくれて、私は私を信じている。なればこそ、この曹孟徳が十全の力を使い果たして勝ち取る平穏でこそ、命輝き誇りが生きる。皆が力強さを求めてなにくそと抗う力を持ち、そうして平穏な世をずっと繋いで行ける力が手に入る……と私は思ってるからあなたの力は借りなかったし、これからも借りるつもりはない」
借りた力で勝利を得ても、平穏が訪れたとしても、華琳にとってはその世界は否。
華琳が命を賭けて誇りを示せるはずの愛しい乱世が……惰性で、堕落で、中途で、半端で、慣れ合いで、くだらない……本当にくだらない茶番劇に成り下がる。
此処に
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