天と人を繋ぐモノは
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時戦略の一端を開始する。油断無きよう、頼むわよ」
月は微笑みながら、その心の深い部分に想いを押し留める。
――ねねちゃん、恋さん……あなた達は私が生きていると知ったら……どうしますか。
人の心を掬い上げるには、ただなりふり構わずに思ったことを口にするだけではダメなこともある……そう知っているから、月は彼女達に“まだ”手を伸ばさない。
――私にはまだ救えない。あなた達を救う為には……もっと多くのイトが必要だから……。
また、乱世が動き始めた。
覇王の妹の産声は、名を口に上げることなく響き渡る。
嘗ての大切なモノを優先せずに、彼女は大陸の平穏を選んだ。
黒を喰らって、喰らって……大きく増した想いを持つ一人の王は、日輪の影でひっそりと輝いていた。
†
仄暗い夜の底。少女は一人、ただ其処にあるだけの温もりに触れる。
人形となってしまった自身の主は、その暖かな陽だまりの日々さえ思い出すことは無く。自分の中にのみ切り取られているその宝物は、美しいだけの思い出と化した。
一つの黒が原因だ。仮の主はその色が好きだと言っていたが、彼女はその色が嫌いだった。
漆黒の闇は夜天を覆う。大切だった真月を覆い隠してしまうから、彼女はその色が嫌いだった。
――黒、黒、黒が染め上げた。ねねの愛しい人を、ねねの大切を、黒が壊した。
腹の底から湧き出る感情の名を、少女は正しく理解している。ソレが無ければきっと生きてはいけない。ソレが無ければ、自分も愛しい主のように壊れてしまったことだろう。
憎悪の感情はタールのように粘りつく。それが余計に、彼女の心を燃え上がらせ、頭を一段高く冷やしていく。
ただ、彼女が向ける憎悪は一つにだけでは無いのだ。
大切な宝物は、美しいだけの思い出と化した。
其処に居た彼女は認めてやろう。過去の彼女だけは認めてやる。
だが……あの時から今までの、その女だけは認めない。
男勝りな女の声が今も耳に響いていた。
言葉を紡いだ。心の赴くままに。
“忠義を。忠義を。銀月に従え。夜天を照らすモノはなんぞ。我らが主は蒼天を支え、暗くなりし夜天を照らしたモノぞ。
天に人に大地に命に愛の詩を詠み、霞を喰らいて雄弁なる華を捧げ、恋音を鳴らした彼女なるぞ。
刃を向けたるモノは全て敵なり。偽善者死すべし。真の善なるは蒼天に忠を尽くした夜天の王のみよ。”
己が欲で戦った下らないガラクタ達は、彼女に勝てるはずも無い。貴様たちの望む世界になどしてたまるか。
その少女、ねねは思う。
欲望に塗れた諸侯達の作る世界は望まない。特に
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