天と人を繋ぐモノは
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。
――彼を信じてるから……私は……
軋む心が落ち着いて行く。
信じることで彼は強くなる。だから、雛里は微笑んだ。
「いってらっしゃい」
見送りの言葉はそれだけでいい。再びおかえりを言う為に。
返される微笑みは昔の彼とダブって見える。照れくさそうに頭を掻いて、本当にあの時の黒麒麟のようで……寂しさが一筋だけ吹き抜けた。
「秋斗、“件の子”から言伝よ」
わざわざ見送りに来ることも出来ないモノは、一人。まほろばでしか人になれないその少女から……天では無く彼女からの言葉。
華琳の発言に彼は少しだけ目を細めた。
「外で働かないまま待ちくたびれるのは御免だ、ですって。ちゃんと帰って来いってことでしょう」
「……ん、りょーかい。そのうち手紙を送るよ。白紙のやつ」
「ええ、“蜜柑か何か”があればいいけどね」
子供のわがままのような言伝に、彼は苦笑を一つ。
華琳にだけ分かる情報を残してから、くるりと反転、まだお菓子を飲み込めていない猪々子に、ちょいちょいと手招きを一つ。
「ほら猪々子、置いてくぞ?」
「んく……ごめんって! にしし、んじゃああたいも行って来るー!」
皆が口ぐちにいってらっしゃいを伝えて、秋斗と猪々子の背を見送った。
戦に赴く時よりも大きな心配が其処にはあった。けれども誰も、それを表に出そうとはしなかった。
二つの影が見えなくなってから、華琳がお茶を一口飲んだ後に口を開く。
「……月」
「はい、“華琳お姉様”」
呼び方が変わっている事に皆は気付く。
ずっと真名さえ呼ばなかった月が、漸く華琳の名前を呼んだのだ。
今になって何故、と思いながらも其処に疑問を挟むことは誰もしない。
「あなたも秋斗から名前を貰いたかったのではないかしら?」
「いえ、曹家として生きる以上、華琳お姉様から頂いた名前で生きたいです」
「……そう」
まだ誰にも明かされていないその名に、他の者達は興味深々と言った様子。
「西涼への使者には“ただの月”として向かいなさい。風の侍女扱いで構わないわ。ただ、あなたが出張っている間に“覇王の妹”の名は河北で広めておく。朔夜、出来るわね?」
「ご随意に」
「御意、です」
慎ましやかに一礼。ふ……とそれを見た華琳は不敵に笑う。
――私の思惑通りというわけには……いかないでしょう。何かしらの不可測が必ずある。
笑みには……この乱世が堪らなく愛おしい……そんな意味が込められていた。
他勢力の近況を耳に入れて、彼女の胸は楽しみに踊っていた。
――……陳宮と呂布率いる荊州勢力によって、孫呉が追い詰められているというのだから。
「では……此れより我らは三点同
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