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プロローグ
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…わからないやつだ。」

日中だと言うことを忘れてしまうくらい厚い雲に覆われた空は、二人をただ見つめていた。絶えず漂う空気に逆らうことなく時は流れる。

「お前は本当に生きたいのか?」

生きたいに、きまってる。

「いや、言わなくていい。」

言おうとしたのに遮られた。彼の考えていくことについていけないのが少し悔しかった。

「そうだな……一週間、俺に付いてこい。そうしたら本物の魚を食わせてやろう。」

唐突過ぎてさっきまで何をすべきなのか考えていた自分が惨めだった。

「とりあえずここで死なれたら色々不都合だ。まず食え。」

無言で頷き、手を伸ばす。さっきよりは比較的動きやすかった。
来夜にも何度か食べさせてもらったことがあったなぁと思いながら、夢中になってかぶりついていた。
悲しいのか、嬉しいのか、自分の気持ちの整理はつかないままに涙を流していた。
ただわかることは、よっぽどお腹が空いていたんだということだけだった。

「まずは体力が低下してるだろうから、暖をとるか。いつまでも段ボールじゃ寒いだろう。」

そういって爪で段ボールを破り、出やすいようにしてくれた。今気づいたことはその爪の鋭さだった。
素直に頷いて段ボールの外へ出た。

「行こうか。俺達の根城へ。」

俺達。そう言ったのは気になったが、考える暇もなく早足で歩き始められてしまい、付いていくのに必死だった。

「そういえば名前を聞いていなかったな。」

草をかき分けながら進みつつ、そんなことを聞いてきた。

「俺の名前はグリードだ。野良猫として生きてる。」

「えっと、僕は、アルマ、です……」

「それは飼い主に付けられた名前か?」

「そうですけど……」

今まで軽快に足を運んでいたグリードは急に立ち止まった。

「もし、飼い主に恨みがあるのなら、その名前は名乗らない方がいい。少なくとも俺と共に行動するときはな。」

「恨みは……ない……きっと、捨てられたのには理由があるはず……だから……」

「……そうか。」

そっけない返事をして、またすぐに歩き出してしまった。
しばらく同じ景色が続き、もう戻れない不安と闘いながらグリードの背中を追うしかなかった。
次にグリードが口を開いたのは大木の前だった。

「ここだ。」

そこは今まで歩いてきた道無き道ではなく、かなり広い空間があった。

「ここで毎日6時に会合を開くことになっている。」

「誰と?」

「私たちとっ!」

急に飛び出してきたのは美しい女性だった。身長は自分と同じぐらいなのに、どこか大人びていた。

「なになに?新入りの子?どこ出身?」

「まだ入っていない。また後で説明するから、定例会まで待て
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