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極短編集
短編92「バイシクル 」

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 初めての自転車は、親が使っていたママチャリだった。それから中学になると、マウンテンバイクに乗った。
 社会人になってからは、マウンテンバイクからロードサイクルに乗り換え、通勤に使っていた。
 結婚をし、子どもが出来てからはロードサイクルからママチャリへと乗り換えた。子どもの送り迎えの為だ。
 子どもが自転車に乗れるようになると、どんな所でも走りやすいようにとマウンテンバイクを買った。子どもに合わせて自分も、ママチャリからマウンテンバイクに乗り換えた。
 大きくなると、子どもは自分で好みの自転車を選んだ。それは普通のママチャリだった。僕はしばらくマウンテンバイクに乗った。
 子どもも独立した頃、とうとう愛用のマウンテンバイクが乗れなくなった。新しく買ったのは、変速機付きのママチャリだった。
 そして孫が出来た。相変わらずママチャリだ。今ではママチャリに孫を乗せ、送迎を手伝っていた。

◇◇◇

『お迎えに参りました』

『おっ!粋な物を持って来たね』

『お迎えの際には、その人の中で一番印象に残っている乗り物で、現れるんですよ』

『そうかあ、だから自転車かあ!』

 こうして、用意されたママチャリに乗って、天国に向かったのだった。

おしまい



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