暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
GGO
〜銃声と硝煙の輪舞〜
疑心好奇
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ら、変成器があっても不思議でも何でもない。

第一、あの再生された音声の中に入っていた声は、男女の区別が曖昧な、どこか非人間的な金属質のノイズが混じった声だった。男であるなどと決めつけるのは間違いなのだ。

そのことを踏まえると、目の前で腹立たしげに鼻を鳴らす少女達が死銃という可能性もなきにしもあらず、ということになる。

今回、この世界に来るにあたってのレン達の仕事は死銃の正体を突き止め、その殺人行為に心意――――インカーネイト・システムが絡んでいるかを《確認》することだけだ。

シゲさんは殺人方法を突き止めろ、などと言ってはいたが、彼とて本当のところ怯えていたのだろう。なぜならそれは、今世界でもっとも関心が集まり、いまだ解明されていない分野なのだから。

心意(かそう)生命(げんじつ)を殺せるか否か。

それは、今現在世界中の科学者達が立証させようとしている"仮想が現実の肉体に与える影響"の、言わば究極だ。茅場晶彦が史上初めて仮想世界を実現して丸三年と少し。技術(テクノロジー)の最奥を抱えたまま彼は逝ってしまったので、いまだその答えは不明瞭なままだと聞く。

まだ若い自分達より圧倒的に長い年月を過ごし、悲しいまでに残り時間がないシゲクニにとって、死とはもはや実感のこもるに値するリアルになっているのだろう。

しかし、それは今のレン達も同じだ。いつ死銃から致死性の心意攻撃が放たれてくるともしれない。使用者からの熱波たる心意は、サーバ内のいかなる事象をも想像の上に塗り替える。その前では安全フィールドなど存在しない。防壁があろうとなかろうと、それがシステム的なものである限りインカーネイト・システムはその上に想像という名の事象を書き込むからだ。

そのため、現在自分達が最も警戒しているのは、心意による奇襲攻撃。ただそれだけだ。

必然、警戒の対象はGGO全プレイヤーといっても過言ではない。

なぜなら、心意にはその容姿も、性別も関係ない。必要なのは行使者の内からほとばしる魂の熱だけなのだから。

油断なく周囲を睥睨しようとしたユウキは、その己の行為に気が付いて顔をしかめた。

疑い。

疑念。

疑惑。

普段自分がもっとも浮かばないような――――否、忌避している感情だ。

別に、人を疑うことはいけないことだなどと、聖人君子のような文言を垂れるつもりはない。しかし、人を疑うことは、その人を信用していないということと同義だ。そんなことは……したくない。

鬱々とした決意をもって隣を見たユウキは、直後に後悔した。

隣に立つ一見すると少女に見える少年の、長い前髪の奥にあった瞳は笑っていなかった。口元は少女達の続く愚痴に合わせて苦笑の色を形どっているが、その大きな瞳だけは欠片さえも感情の揺ら
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