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第三章

「これは海草じゃな」
「そうです。イワツバメは海草から己の巣を作ります」
「ではこれはかなり身体にもよいな」
「その通りです」
「よいのう。他のも見事じゃ」
 見れば皇帝は烏賊や海老をふんだんに使った料理も楽しんでいた。とにかく広東のものは海のものが美味しく感じられた。それにだった。
 御飯、炒飯のそれも食べる。それはだ。
「卵にじゃな」
「海のものを使いました」
「これもよい」
 この国の料理の基本中の基本のだ。それもだというのだ。
「料理はまずは炒飯からじゃが」
「その炒飯がですな」
「よい。よい料理人じゃな」
 皇帝は炒飯を作った料理人も褒めもした。そしてだ。
 食べ続けながらだ。こんなことも言った。
「これだけ豊かな海の幸があればそれに溺れる」
「しかしだというのですな」
「それに溺れず充分に生かしておる」 
 皇帝は海鼠や鮑も食べていた。乾燥させ料理の中に入れているのだ。
 そうしたものも食べながらだ。言うのだった。
「よいわ。そして決まったぞ」
「この国で最も美味なもの」
「それがですな」
「そうじゃ。ここの料理じゃ」
 皇帝は満足している顔で己の周りに控える宦官達に述べた。
「この広東の料理じゃ」
「では他の料理と比べてですか」
「広東のものはよいのですか」
「朕はそう思う」
 皇帝である彼の言葉だ。そしてだった。
 今度はいささか残念な顔になってだ。こんなことを言ったのであった。
「北京におることが残念じゃ」
「都におられることがですか」
「そうだと仰るのですか」
「そうじゃ。北京からこの広東は随分と離れておる」 
 このことがだ。残念だというのだ。
「これだけ美味なものを何時でも食することができぬとはのう」
「しかしそれはです」
「御気持ちはわかりますが」
「わかっておる。朕は皇帝だ」
 この国の主、それならばだというのだ。
「都におらねばならん」
「はい、そうです」
「その通りです」
「そうじゃ。では数日ここに留まり食べ終えればじゃ」
 そうすればだというのだ。それからすることは。
「北京に戻ろうぞ」
「ではその手配はです」
「お任せ下さい」
「そうする。しかし決まった」
 皇帝は満足している顔で述べていく。」
「この国で最も美味な料理はな」
 箸を動かし続けながら皇帝は言った。そうしてだった。
 皇帝は満足している顔で北京に戻った。そのうえで料理人達にこれまで食べてきた料理、とりわけ広東料理のことを話してだ。宮廷の料理をさらに豊かにさせた。
 そのうえで美食に包まれ続けた。しかしだった。
 皇帝はその中でだ。時折こんなことを言った。
「また行きたいのう」
「あの、またですか」
「またなのですか」
「そう
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