第十八話
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すべきモンスター。リリは今までそう思っていました。
そんな中、ベル様だけは違ったのです。ただ純粋にリリを思いやって接してくれます。女子供だからといって蔑ろにしません。荷物持ちだからといって侮蔑しません。衷心から、思うままにリリを大切にしてくれます。
偽りまみれの世界で這い蹲っていたリリにとって、ベル様はまさしく太陽のような存在でした。ベル様のように純粋になりたいと羨んで、ベル様と一緒にいたいと望んで、ベル様の助けになりたいと思いました。偽り無いベル様の言動一つ一つが、偽りにまみれ傷つき果てたリリの心を癒してくれます。
こんな心優しい冒険者もいたんだと、ベル様に会うために今まで苦しんできたんじゃないかと、感じるようになりました。
だけど、リリの現実は変わらず残忍でした。あと数日もすればファミリアの掟によって定期の徴税と最低限の仕事を収める日がやって来ます。前者はともかく、後者を乗り切るためのお金をリリは持ち合わせていません。しかも、すぐに用意できるような量ではありません。それこそ、誰かの財産に匹敵するようなものです。
ベル様に嫌われたくない。でも裏切らなくては死ぬより辛い日々が訪れる。
ベル様と離れたくない。でも切り捨てなければリリは一生後悔するかもしれない。
欲望と現実が、リリの小さな体の中で犇めき合います。その度に心が抉られた様に激痛を訴えて、考えるのをやめさせるように頭痛が響き渡ります。一日を終えてベッドに就いても夢の中にまで現れて、何度悲鳴を上げながら飛び起きたことか。
次第に眩暈がして、吐き気が訪れて。こんなに苦しむくらいだったらいっそのこと狂気に身を委ねてしまえば良いのではと頭を掻き毟りました。
狂おしいほどの葛藤に苛まれる中で、超えてはならない一線の直前で踏みとどまらせてくれたのが、レイナ様から頂いた報酬の革袋でした。
あれは、リリの罪を具現化したもの。あの重さが、あの硬さが、今までリリが犯し続けた過ちの数々。硬貨の一枚一枚が、リリの罪状。
リリは結局レイナ様から頂いた報酬を1ヴァリスとも使うことは出来ずにいたのです。机の上に乗せておけば、穢れきった自分を止めてくれる物になるんじゃないかと思って、頂いたその日以来一度も触れていない物です。
何度それをぶちまけたいと思ったことか。あんな目障りな物があるから苦しむんだと当て付けて部屋中に叩きつけられたら、どれだけ気が楽になることか。袋に手を伸ばしかけては止めて、進みそうになる腕をもう片方の腕で押さえつけての繰り返しです。
ただ、去り際のレイナ様の微笑みが忘れられないのです。レイナ様が仰ったように、リリが邪険する冒険者にもベル様のような人がいると知ったから。
ついさっきすれ違ったレイナ
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