第十八話
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いじゃないでしょ。いつか言ったと思うけど、私は感情というか人となりというか、そういったものを見る目はある。
経験は語る。あれは黒だと。
思考とは裏腹に大人の仮面を被り続ける私に、フードでベルの視線を遮りつつ苦虫を噛み潰したような顔を浮かべるリリ。無言の代わりに視線でお互いの腹を探り合う。再び両者が両者を凝視し合ったことでベルがますます不思議顔を浮かべるのだが、リリはそれを気遣う余裕を失っているのか何も声を出せずにいる。
……ま、現行犯じゃないし、今はまだ目を瞑っておこうかな。不穏分子は潰すのが最善手だけど、私はリリのことを少なからず信用している。リリは何かしら辛い逆境の中でも良心を保ち続けた優しさを持っている。そんなリリが罰を科せられてなお罪を重ねようとするとは思えない。いや、思いたくない。
先に私が視線を外しベルに向ける。リリがか細い息を吐いたのを尻目に言葉を掛ける。
「リリさんに負担を掛けたくないですし、ベル君も忙しいでしょう。私はこれで」
「あ、はい。また今度一緒に回りましょう!」
ちょっとだけ残念そうな色を浮かべながらもぱっと笑ったベルに笑みを返しつつ、八階層に繋がる連絡路がある通路に足を向ける。
小さな体と擦れ違うときギリッと歯を食い縛った音を聞きながらも、私はその場を後にした。
◆
予想外でした……。まさかベル様が仰っていた『黒髪の可愛い女の子』がレイナ様だったなんて……。度々ダンジョンの中で会っては狩りを共にする仲だと聞いていたので、いざとなった時はそれなりの注意をしないといけないな、ぐらいの気構えでいたので不意を突かれた時の心臓の跳ね様といったら無かったです。
しかもリリと目を合わせた瞬間、レイナ様は明らかな疑念の色をその瞳に宿しました。何という洞察力でしょう。全く自慢できることではないですが、私は生まれてからほとんどを人の顔色を窺い続けてきました。だからそれなりに人の思考を読んだり、また自分の感情を押し殺す術を見に付けています。
それなのにレイナ様はあっさりと見抜いてきました。リリが未熟だったというのも大いにありますが、察するまでの時間が早すぎて畏怖の念を抱いたレベルでした。
ベル様には、私の前科の一切を話していません。話してしまえば私の目論見が露見してしまうというのもありますが、何よりもここ数日でベル様の人となりを見せ付けられた私は罪を犯したという事実そのものを知られるのを恐れているからです。
私が今までお供してきた冒険者は一人の例外を除いて醜悪の塊のような下衆どもでした。女子供にも容赦無く手を振り上げて、働いても報酬をケチったり踏み倒したり、最悪な時は体に手を掛けようとまでしてきました。
冒険者は野蛮で陰湿で汚らわしい卑下
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