第十八話
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理由の一つに、ベルに対する建前もあったりする。彼にも無所属ということで通っているから、今みたいに七層でばったり出くわしても不自然の無いように工作しているのだ。その点、低難易度のものしかないというのは都合が良かったりする。
ベルとダンジョン内で会ったらその場で少し会話を交わした後、大体ベルの方から一緒に回らないかというお誘いが来るんだけど、今日は少しだけ違った。
「ベル様、回収終わりまし───」
「あ」
ソプラノの声が通路の奥から聞こえ、遅れて姿を現したその人物に私は間抜けな声を漏らす。その人物も同様に笑顔のままビキリと音を立てて硬直、小さな腕に抱えていたバックパックをどしゃりと地面に落とした。
刹那の沈黙の狭間に立たされたベルは「?」を頭の上に掲げて私たちを交互に見回した。それでようやく我に帰ったらしい獣人族の少女が沈黙を取り繕った。
「えぇっと、ベル様、そちらの方はお知り合いで……?」
「あぁ、うん。いつか話してたレイナさんだよ」
紹介を預かったから何か言葉を返すべきなんだろうけど、さすがにこれには老婆も対応に困りますよ……。
まず第一、なんで小人族のリリが獣人族に成りすましているんだ、ということ。今は深くフードを被っているけど、ローブの端から尻尾が揺らめいているのを見た。見間違えかと思って見直したけど、やっぱり犬の尻尾がそこにあった。
次に、そもそもリリではなく人違いかと思ったけど、やっぱりその大きな栗色の瞳と髪の毛、快活そうで可愛らしい顔立ちは間違いなくリリだ。ソプラノ調の声も裏付けている。
最後に、もしかして……という疑心が芽生えたからだ。
数瞬の内に迷った私だけど、ベルが訝しむ前にこう返事をした。
「初めまして」
「……初めまして。私はリリと申します」
うん、知ってる。私から言い出したことだけど、一応初対面じゃないからね。
私たちの関係を知らないベルは平和に笑いながらリリは自分のサポーターとして働いている子なんだと説明した。
まぁ、それも知ってる。彼女のサポーターの腕は優秀だ。自分を売り込んで契約を取り付けるサポーターはざらにいる。というか、それが正規法だし、それは問題無い。
一番の問題が、何で私の顔を見た瞬間に『ヤバイ』という顔をしたのか、である。
彼女は小人族だから実際の年齢は正しく知らないけど、それでも今の顔を隠す速さは目を瞠るものがあった。まあ、そもそも億尾にも出さないのがベストなんだけども。
とまあ、要するに『ヤバイ』という感情を慌てて隠さないといけない事情があると見て間違
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