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ダンジョンに出会いを求めるのは間違っていた。
第十八話
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にLv.10に到達していた。もしかしたらそれをも超越していた。彼は絶対的な天賦の才に恵まれていながら、私と同等かそれ以上の努力を積み続けた、非の打ち所の無い武人だった。若くしてLv.8に至った伝説の武人なのだ。

 それを、私は()()した。彼の心身の一切を、一つ残らず。

 さすがに7時に記念碑(モニュメント)を見に来るなんていう酔狂な人はおらず、私の懺悔にも似た独白が阻害されることは無かった。
 一通りレイナとして歩んだ今の自分を振り返りつつ、ヘラクレスの記念碑(モニュメント)の足元に買ってきた花を添える。

「荒唐無稽な御伽噺みたいだけど、大体そんな感じだよ。もう二度と後悔するようなことはしなたくない。そのために私は努力をしてるんだから……」

 セレーネ様に救われ、精一杯奉仕するために努力して。無為な犠牲を出さないために武器を取って。長いようで短い人生を歩んできた。

 だけど、その果てに私は何を守れた?

 セレーネ様は行方不明、大親友をこの手で殺め。この前なんて自分の愚鈍さで殺してしまうところだった。
 生きる伝説と呼ばれた私だが、蓋を開ければ大した奴どころか、空回りし続ける道化師のように滑稽で、無力だ。

 ヘラクレスを想うと、今の自分のあり方が無償に忌々しく感じる。あの日以来、私は彼から背を背けるように生きてきた。セレーネ様のためだと、みんなのためだと理屈を付けて見ぬフリをしてきた。真に向き合わなければならないのに、私は逃げてきた。彼の命日という建前が無ければ足を向けることができなかったのが、何よりの証拠だ。

 私は、あまりにも弱い。

「ねぇ、ヘラクレス。どうすれば私はキミのように強くなれるのかな……」

 獅子を素手で倒し、水蛇を乗り越え、鹿を調教(テイム)し、猪を伏せ、濁流を捻じ曲げ、青銅の鳥を射止め、牡牛を鎮め、人喰い馬を還し、アマゾネスを制し、紅牛を生け捕り、黄金の果実を持ち帰り、番犬を退けた。
 まさに不撓不屈の精神で以って数多の難業を成し遂げ、数え切れないほどの人々を救った。私が知る限り古代から今に至るまで、彼を凌ぐほどの英雄は存在しない。私の憧れの英雄だ。
 
 彼を殺した私が決して言ってはならないことだと解っている。だけど、それでも、私はあの日言いそびれた事を彼に伝えたかった。

「出来ることなら、()()()()()()()()()()

 あまりに無責任な願い。そして、紛れも無い本心でもあった。ヘラクレスの隣に無遠慮に立つ己の墓標に一瞥し、彼の記念碑(モニュメント)が立つ地面に一輪のバラを差し込んだ。私の願いへの楔として、彼への最大の謝罪として。

 そして、第二の人生を歩む私
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