交渉 3−1
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でいい機会は滅多に無い。これを見逃す理由はどこにも無い。
ルビウスは諦めた様子で付いて来ているが、少し離れただけで彼の大きな体さえ見えなくなる。
どうも俺は熱中しがちなようで、ルビウスが連れて来た番犬のファングによく吠えられた。俺がはぐれてしまわないように...というのは理解出来るが、そこまで吠えられてしまうと貴重な動植物達が逃げてしまう。
注意しなくては......。
「ーーお...!」
目的の物が見つかった。思わず大声を上げそうになってしまったが、なんとか堪らえる。
俺の目前には、黄色や紫、緑に青...といった様々なイボを背中に生やした大きなカエル。カエルを傷付けずにイボを採取する事が出来れば、様々な実験が可能になる。
...さて、とりあえずーー。
「ーーペトリフィカス・トルタス(石になれ)」
人間以外の生物にも呪文が効くかと少々不安だったが、俺の声を聞いたカエルは石のように固まってしまった。実験は成功と言える。
すぐに試験管を数本とピンセットを取り出し、色の違うイボを一つずつ採取していく。カエルを傷付けないように、イボを潰してしまわないように神経を尖らせる。
全てのイボを取り終えるまでに三十分も掛けてしまった。
「フィニート(終われ)」
呪文終了を唱えると、カエルは逃げるように去って行った。まさか、己が呪文を掛けられるとは思いもしなかっただろう。驚かせてしまったな....。
さて...。あとは霧が晴れるのを待って、夜まで散策を続けるつもりなのだが、ルビウス達はいつまで付き合うつもりだろうか?
それにしても静かだな。微動だにしないし、まるで石のよう......。
「フィニート(終われ)!」
「っぶはぁ!!」
「すまん。どうやら、呪文が広範囲に拡散していたらしい。......何気に制御が難しいな」
「一生あのまんまかと思っちまった...」
ルビウスに続いてファングも弱々しく吠えた。
その後、小屋をずっと留守にはしておけないと言ってルビウスは帰った。まだ採取を続けたい俺には番犬のファングを残したが、大丈夫なのか、こいつ...。尻尾が下に巻いているし、小さな音に敏感過ぎて悲鳴と威嚇が混ざったような吠え方をするし....。
この時、もし早めに散策を切り上げていたら『彼』に気付くのが遅れてしまっていたかもしれないーーー。
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