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異世界系暗殺者
自律の時間(2016/05/16 一部修正)
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イッキさんは御強いですね。先手後手入れ替えて、5局全敗です」
「チェスや将棋みたいなボードゲームは二人零和有限確定完全情報ゲームだからな。10の120乗倍――無量大数以上の局面を把握できれば、グランドマスターを敗れるプログラム相手でも必勝できる。つまり、俺から言わせればこの類のボードゲームは○×ゲームと大差ないってことだ」
「こいつの学習力も凄いが、南の頭の中は更に凄いな。規格外過ぎるだろ」
「はい。イッキさんの頭は最新のAIを凌駕しています。ところでイッキさん」
「ん?何だ、律?」
「その、先程から言っている律というのは一体何なのでしょう?」
「お前の名前だよ。自律思考固定砲台とか、サーバマシン(仮)なんて呼称は長過ぎだろ。俺のイッキと同じお前の愛称とでも思え」
「いいねぇ〜。安直だけど、響き的にも可愛いし」


適当に名付けた愛称は、クラスでも割と好評だった。名付けられた当人も―――


「お前はそれでいい?」
「……嬉しいです!皆さん、以後私のことは律とお呼び下さい!!」


……適当とはいえ、満面の笑みで喜ばれたら嫌な気分にはならないな。こんな感じで、この日はE組のほぼ全員が律を交えて平穏に過ごせた。そして、翌日――


「オハヨウゴザイマス、皆サン」


律はたった1日で退化していた。烏間先生曰く、開発者が律の進化に不必要なものが多いと判断し、分解して元に戻したそうだ。全く、余計なことを!!

しかも、開発者からの要望で殺センセーだけでなく、俺達生徒も律に拘束を含むあらゆる危害を禁止された。ぶっちゃけ、その開発者とやらは一体何様のつもりなんだ!?

……まぁ、いくら愚痴った所で現状が改善される訳でも無いし、いざとなったら風系(トリック)である風の障壁か、轢藍の道(オーヴァ・ロード)の 無限の空(インフィニティ・アトモスフィア)無限の轍(インフィニティ・フェイラー)で攻撃を妨害するか。攻撃の妨害は危害に含まれない訳だし。

と、こんな説明をしている間に1限目の数学の授業が始まった。クラスの皆は、律の砲射撃がいつ始めるかを警戒している。

そして、律から砲射撃を開始する際に聞こえてくる起動音が教室に響いたかと思うと―――


「「「「「「「「「「!!?」」」」」」」」」」


クラッカーの様な破裂音と共にプラスチックでできた造花の花弁が教室内を舞った。


「花ヲ、作ル約束ヲシテイマシタ。殺せんせーハ私ノ本体ニ……、計985点ノ改良ヲ施シマシタ。ソノ殆ドハ、開発者(ますたー)ノ判断ニヨリ削除。撤去・初期化サレテシマイマシタ。
デスガ、私個人ハ学習シタE組ノ状況カラ強調能力ガ暗殺ニ不可欠ナ要素ト判断シ、消サレル前ニ関連そふとヲめもりノ隅ニ隠シマシタ」



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