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【短編集】現実だってファンタジー
R.O.M -数字喰い虫- 4/4
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んとも縁を切ることになるかもな」
「いいんです。中途半端に関わって、喪って、迷惑かけて……そのまま目を逸らして生きていくなんて出来ない。『前の美咲ちゃん』に顔向けできない。許してくれるとしても自分で嫌なんです」

 会社のオフィスの中でもひときわ狭く、ひときわ目立たず、ひときわ窓際に近い「援助課」の一角で、彼女は覚悟を決めたように真っ直ぐな目でこちらを見つめてきた。
 極彩色の蝶の髪飾りを指で弄ぶメリーも、ついでに同僚にして部下の大江戸も遠くから物珍しげにこちらを見ている。あいつはまだこちらの事情に気付いていないが、放っておいてもいいだろう。
 春歌がしっかりとした口調で、宣言するように告げる。

「わたしも、ヨクジンを追います。おじいちゃんの残した数列からしても、構造の理解できる血縁者の協力は必要だと思いますけど……いけませんか?」
「――人の死に目に遭うかもしれないぞ。碌でもない人間として罵られることもあるかもしれない。だからハッキリ言う。中途半端な覚悟なら帰れ」

 突き放すような一言に、しかし少女は眉一つ動かさず毅然と立ち向かった。

「美咲ちゃんの死に目に遭いました。それに、他人でなく自分を罵倒したのも一回や二回じゃない。それくらいの覚悟、出来てます。ついでに言えば………あんなものを作れる連中がもし私と同じような事をしているかもしれないと思うと、我慢なりません」

 揺るがない不屈の意志。女性というのは、一途になったらとことん強い。
 大切なものを護るための気高い志。林太にもメリーにもないエネルギーと可能性を感じた。――決まりだ。

「わたしメリーさん。わたしは林太とともにヨクジンを追う永遠の追跡者」
「俺は稜尋(いつひろ)林太。両親の仇、ヨクジンを追うために都市伝説と手を組んだ男だ」
「わたしは、三改木(みそろぎ)春歌(はるか)。運命を弄ぶ相手を見つけるために、相手と同じ力を使うことを決めた女子高校生です」

 その日、ヨクジンを追跡するメンバーに新しい顔が加わった。
 この運命を真に導いた者が誰なのかは分からない。
 ひょっとしたら、彼女が覚悟を決めたそれさえも、実際にはもっと漠然とした意識が誘導したものなのかもしれない。この世界には、そのような作為が確かに存在していると、最近はよく思う。

 だが、それでもメリーはメリーで、俺はヨクジンを恨み、彼女の覚悟は砕けないだろう。

 それだけは、集合無意識だろうとヨクジンだろうと覆せえぬ現実として存在する。

 都市伝説のストーリーと同じように、全ての結末を用意するのが集合無意識だったとしても――それでも、真実を見つけるのはここにいる俺達なのだから。
 
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