第三部。終わる日常
第一章。赤マントのロア
第一話。雷雨の中の襲撃者
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けて掴んできた。
手に力が入らず、頭が朦朧として、目が霞む。
「やっ……め、ろ……!」
俺はその手を両手で掴むが、万力のような力で締めつけられた首から外れることはなかった。
その指先はそれ以上締めつけることはなく。
殺害目的の首締めというよりは、俺を落とすことが目的のように感じられた。
「うぐっ、お、おおおおっ!」
両足をバタつかせていると、上履きの先にさっき落としたDフォンが触れた。
(コイツを俺に近づけて……一之江を呼ぶボタンさえ押せれば!)
そんな俺の目論見を嘲笑うかのように。
もう一本の腕が地面から現れて俺の足を掴んだ。
「うぐっ??」
腕は二本だけではなかった。さらにもう一本現れて、もう片方の足も掴まれた。
完全に動きを封じるため______だけではないようで。
霞む視界の中で、俺の足が廊下の床にめり込んでいくのを捉えた。
「なっ??」
まるで底なし沼にはまったかのように、足が沈んでいった。
感触はまるでないのに、足の先はまるで動かない。
「ぐっ……あっ……」
俺はこのまま、床に埋められるのか?
コイツは俺を締め殺すロアではないということか?
青白い腕。何本も出る手。
そんな都市伝説はたくさんある。
思い出せ!
考えろ!
コイツは一体、何の都市伝説だ?
床に埋められながらも、俺はこの都市伝説について考える。
だが、霞む頭では何も考えられなくなっていき。
思考力を奪う、というのは情報戦が主体であるロアとの戦いでは、こんなにも有利なんだな。
っと、薄れゆく意識の中で色々思考を巡らせていた。
このまま目を閉じたら……意識を失ってしまうから。
気絶しないように踏ん張る、それだけを最後の抵抗にして。
「負け、られるかよ……!」
このまま、意識がぼんやりしたまま戸惑っていたら負けてしまう。
そうなったら。
『主人公』である俺が負けたら、一之江も、キリカも、音央も、鳴央ちゃんも。
みんなが……負けたことになる。
そんなのは……嫌だ!
「う、おおおお!」
喉から声を振り絞り意識を強く保つ。
そして、なんとか動く場所を考えてみる。
両手はフリーだ。
この首を掴んでいる手を離せばいくらでも動かせる。
そして……息は苦しいが、口も動く。
目もなんとか開けられるし、耳も聞こえる。
足は……もう膝まで廊下に沈んでいるが、それがどうした!
今は俺を締めつける手をなんとかするのが先決だ。
今の俺はヒステリアモードではないただの俺だ。
『桜花』や『秋水』は放てない。
だったら!
俺は手を離して、むしろ相手の手首を掴んだ。
細くて華奢な腕。女の子の腕だろうか?
______女の子が、自分のいる場所に引き込もうとしてい
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