第三部。終わる日常
第一章。赤マントのロア
第一話。雷雨の中の襲撃者
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ではない。
誰かが俺をじっと見ている。そういう気配だ。
それも一つじゃない。
一つは好意的な視線で。
もう一つは好意的な視線でも、敵意でもない。
そう、値踏みされているかのような、そんな感覚を感じる。
「どこで見ている?」
焦りを感じながらもその視線の主を探すと。
すっ、と白くて細い手が俺の首の横から二本挟むように伸びてきた。
「うおぉっ??」
それは紛れもなく、手だった。
青白い人間の手。
一之江の『ロアの世界』での恐怖は、追いかけられ、追い詰められ、そして気づいた時には真後ろにいるみたいなものだった。
狙った獲物の精神を追い込んでいくあの手法は、ドSなアイツにピッタリなものだった。
だが、コイツは違う。
静寂な中から、静かに腕だけを伸ばして……。
その冷たい手が、俺の首を静かに握っていた。
「ぐっ??」
気づいた時には既に遅く。細い指が喉に食い込んでいた。
真綿を締めるように、ただひたすらゆっくりと。じわじわと。
「っっっ!」
それはプロレス技でいうとこの、ネックハンギングツリー……!
(これはまるで『妖刀』に襲われたあの時みたいだな。
ただあの時と違うのは相手が素手で締めているというところだ!
なら……)
俺は首が傷つくのも気にせず、無理矢理その手を引き剥がそうと手で掴んだ。
その拍子に、手にしていたDフォンが廊下を転がった。
赤く、ぼんやりとした光が俺への警告として薄気味悪く輝いていた。
肌に食い込む爪が、首の肌ごと削る激痛に意識が逆にはっきりしてきた。
こんなものに殺されてたまるかよ!
(散らせるものなら……散らせてみやがれ!)
首がちょん切られるくらいの痛みが全身を襲った。
だが俺は諦めずに無理矢理その手から脱出した。
と同時に、どろりと熱いものが首から流れる感触を感じた。
その直後。
「っ!」
ゾクっと寒気を感じた俺は首の痛みを無視して後ろを振り返る。
……そこには。
何もない空間から伸びる、二本の腕があった。
「な、なんだよ、これ??」
生身の、腕だけというのは不気味だ。気味が悪すぎる。
しかもその指先には自分の血が付いていて、わきわきと蠢いているのを見てしまうのは。
「な、なんなんだよ??」
思わず頭が混乱してしまい、叫び声を上げてしまった。
その腕は俺が見ている前でスーッと音もなく消えていき。
ひやり。
再び俺の背後から、首を包むように冷たい感触を感じた。
「がっ……あっ……!」
首の締め方に上手さ、下手さがあるのなら、この腕を操る奴は間違いなく達人だ。
的確に俺の呼吸を止め、意識を奪う筋を覚えている。
傷に触れれば痛みで覚醒できるはずなのに、その箇所を的確に避
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