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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
追憶の惨劇と契り篇
50.金色の異端者
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あろう。しかもその反応が二つ。
明らかにそれは戦闘を意味している。しかもその魔力の反応うち一方は一瞬のうちに
消失
(
ロスト
)
した。
そんな馬鹿げたことができる吸血鬼などこの街に一人しかいない。海原を一瞬にして暴走させるまでに陥らせたこの祭典の最大の障壁となる吸血鬼。
「海原さん、大丈夫でしょうか?」
柚木は魔力の残滓を追いながらわずかに後方を見やる。ちょうど病院から出たと同時くらいに出現したもう一つの強大な魔力。それを追って一人で駆け出して行ってしまった。
彼が追っていった魔力は多分、六宮恵によるものだろう。彼女に何かあったとするならば海原が動かないわけがない。
すると隣を走っていた美鈴が口を開いた。
「彼なら大丈夫よ。ああ見えてもあれでかなり強いから。実際に戦ったあなたならそれはわかるでしょ」
初めて“
神意の暁
(
オリスブラッド
)
”と戦った。だからこそ海原の強さを柚木は身を以て知っている。暴走していたせいで異常な魔力量であったこともあり彩斗とあの少女が来てくれなければ確実に負けていただろう。いや、多分そうではなく本来の眷獣の力というのがそれなのだ。吸血鬼の中でも眷獣の力を全て引き出せる者はごくわずかだ。
「そうですね。海原さんなら大丈夫ですよね」
彼ならきっと恵を助けてくれる。そう信じているからこそ柚木も他の皆も海原に任せることができる。
「美しい友情ってかァ? ……くだらねェ」
その声にその場の全員が足を止めた。倒壊した建物の上から聞こえてくる。月明かりでわずかに照らされ、輪郭が浮かび上がり、徐々に鮮明になっていく。
派手な金色の髪が襟足まで伸びた制服姿の少年。不敵な笑みを浮かべ建物の上から飛び降る。
その場の全員が彼から目が離せなくなる。確信ができたわけではない。しかしこの少年こそが海原を一瞬にして暴走するにまで追い込んだ人物だということをだ。
「おいおい、なんだよその反応はよォ。つれねェ奴らだな」
一歩一歩ゆっくりと近づいてくる。その度に肌をピリピリと刺すような感覚がより一層増していく。
───逃げなくては……。
しかし恐怖で足が竦んでピクリとも動こうとしない。まるでゴーゴンの瞳に見つめられた時のように石化している。
「にしてもいいのかよ。こんなにも束になっててもよォ?」
不敵な笑みを口元に浮かべたままこちらを睨んでいる。 正確には柚木たちの後方。そちらを振り替えようとしたその時だった。
「───ッ!?」
激しい魔力がまるで滝のように空気へと放出されていく。それは先ほどまで柚木たちがいた病院の辺りからの反応だ。しかもこの感覚は、通常の魔力の流れではない。意志を持たず、ただ生命の危機から自らを守ろうと無造作に暴れまわる獣
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