第三章 [ 花 鳥 風 月 ]
五十四話 凶夜の警鐘 壱
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るが実際には既に『考えない様にする』という思考を浮かべているのだから。
そして『何を考えない様にするか?』と考えそれに関する事柄を全て無意識の内に連想してしまっている。
例えば『アレを知っているか?』と問われれば自分が知る限りの『アレ』を模索するだろう。これは言葉に対する反射に近いもので理屈云々では無い。
悟り妖怪はそう言った反射で生まれる思考の洪水から自分が必要とする情報だけを掬い上げる事が出来る唯一の存在であり“真の心理学者”と言っても過言ではないだろう。
そんな悟り妖怪の二人に心を解読されなかった萃香の意思の固さは相当なものだ。さとり達が無理と断言する以上、口を割らせることは出来はしないだろう。
「……そうか〜どうしようーかな〜」
そう発した虚空の口調には何時もの通り深刻さは感じず表情にも焦燥感は見えなかった。しかし何時もなら無理だと感じる事を避ける虚空が未だに萃香からの情報の聞き出しを模索していた。
表情には出さないが虚空自身も焦りがあるのだろう。百鬼丸や輝夜の事も踏まえ何とか今夜中に行動に移さなければならないからだ。
さとり達に無理と宣告された所で他に取れる選択肢は無く余裕も無い。
打開策が浮かばない一同は揃って口をつぐみ、部屋には重苦しい沈黙が満ちゆっくりと時間だけが過ぎてゆく。
そして暫く部屋全体にそんな重い空気が充満していたが突如虚空が場違いなくらい明るい声を上げた。
「そうだ!イイ事思いついたッ!」
そう叫ぶや否や周りがドン引きする程の笑顔を浮かべ襖を叩くように開けると暗闇が広がる廊下へと足音を立てながら走り去る。
しかしすぐに戻ってくると部屋で呆気にとられていた天魔の手を取り、
「ごめんね天魔!ちょと来てッ!」
と強引に連れ去るように再び部屋を後にする。廊下の方からは「え?え?え?え?」と天魔の戸惑いを含んだ声が遠ざかりながら流れていた。
「…………一体何を考え付いたのかしらね?」
幽香のそんな呟きが溶ける様に部屋へと響き、ほぼ全員が同じ事を思っていた。
『絶対に碌な事じゃない』と。
それは正しい虚空に対しての認識でありある意味では信頼の表れなのかもしれない。
「それでさとり、こいしアイツは一体何を考え付いたの?読んでたんでしょ?」
幽香の問いかけにさとりとこいしは一瞬顔を合わせ微妙な表情をしながら同時に口を開いた。
「「 懐柔 」」
二人の言葉に部屋に再び沈黙が舞い降りた。
全員の思考は先ほどと同じ様に違わず『え?説得も拷問も意味無いから懐柔?さとり達の言葉を聞いてそれ?』であった。
本物の馬鹿か、もしくは裏があるのか――――『阿呆に見えて計算高く、策士的に見えて行き当たりばったり』と
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