第十六話
[3/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
う。それは葵にとって歓迎できない事態である。
彼女の友人として、こんな下らない人間の為に心が傷つくのは許せないし、なにより彼女のコンディションに影響が出るようでは困るのだ。ひどく落ち込むか、”もっと頑張らないと”と言って倒れるまで自分を追い詰めるのが目に見えるようだ。
(チッ・・・!これがマスコミじゃなきゃ見殺しにできたのに)
ただの一般人なら、証拠隠滅することだってできた・・・かも知れないが、彼らは生放送の真っ最中だ。彼らが死ねば隠滅することなど出来ない。必然的に、”バレない範囲で助ける”という難易度の高いミッションに挑戦することが確定してしまったのだ。
「はぁ・・・不幸だ。」
小さく呟き、彼は地面を殴りつけた。
★★★
「おい、なんだあれ!?」
「つまり―――え、何ですか?」
何度も波に浚われたり吹き飛ばされそうになりながらも、根性で取材を続けていたあるレポーターは、カメラマンが思わず叫んだ声に釣られてその指の方向を向いた。
その異変を見つけたのは彼らだけではない。他のマスコミたちも、最初の一人の声を聞いてそちらに視線を向けていたのだ。
「―――何、アレ・・・?」
そして、全員が絶句した。
Uoooooooooooooooooooooooooooooooooo・・・・・・!
最初は風の音かと誰もが思った。しかし、その音は段々近づいてくる。そして、それとともに、海からナニカが浮かび上がってきたのだ。
ザザザザザザザザ―――!
巨大なナニカがその姿を表そうとしていた。海から、まるで大木のような太さの、蛇のようなモノが姿を現したのだ。
太陽の光が分厚い雲に覆い隠された暗闇の世界。海面に出ている長さだけで十数階建ての建物にも匹敵するソレが、自分たちを見つめているのだということに、レポーターの女性は気がついた。
ガシャン!
カメラやマイクが地面に落ちる。
(あ・・・ここで死ぬんだ・・・)
吹き荒れる嵐の中、暗闇だというのにソレの瞳は真っ赤に輝いている。それが、自分たちを品定めしているのだと本能的に気がついた瞬間、体から全ての力が抜けた。マイクは滑り落ち、地面にへたり込む。周りからも同じ音がしている。ここにいる全ての人間が、生きる気力を失っていた。あまりにも圧倒的過ぎて逃げるという考えさえ浮かばない。思考は千々に乱れ、体は小刻みに震えて指一本すら動いてはくれなかった。耳につけたイヤホンからキャスターの呼び声が聞こえるが、それに答える気力などない。
ニヤリ、と。
獲物が逃げないことを察したのか、それが笑った気がした。
口を開ける。
その大き
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ