第十七話
[8/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
それすらも隠蔽していたとなれば適わないが、実際リューの目から見ても純粋にシルの恋相談に応じつつシルの心を受け入れているように見える。
今日は思わず疑心を表に出してしまった。これでシルの大事な人の内の一人が酒場に寄らなくなってしまったかもと思うと罪悪感が心を蝕むが、それならそれで良い。不安の芽は早めに摘むに限る。
だけど、もし気にせずまた来るのなら、常にレイナを監視しなくてはならない。自分を救ってくれた《豊饒の女主人》に報いるために、大切な仲間たちを今度こそ守るために。
リューの中で、レイナの認識が決定的に変わった瞬間だった。
◆
ちょっとだけ後ろ髪が引かれる一件があったものの、気に病む必要は無いと思う。よくよく考えれば、リューに向けられた殺気にマイナスのイメージが無かった。何を言ってんだコイツ、と思うかもしれないけど、私の感覚的には我が子を守る母猫という感じかな。快楽殺人とか、イラついたとか、そういう種類の殺気じゃなかったと思う。
悲しいことに、前世で私はそういった類の事件に呆れるくらい巻き込まれてきた。実力こそ権力と言って憚らない冒険者業界だけど、権力が付けば影も付くものだ。影の闇に潜む魑魅魍魎たちが、その権力を横取り貪ろうと這い寄ってくる。
かなり多くの経験を経た私にその判別が付くようになった。もちろん凄い漠然とした感覚頼りで判別してるんだけどね。あとは主観と客観で。
なにやら凄い警戒されてたけど、それなら誤解だと言わないと気分が晴れない。それにシルとベルに関する約束があるし、それに弁当食べたいし。これからも遠慮なく足を運ぶとしよう。
さて、そんな煩悩を抱いてるとダンジョンで死に兼ねないのでしっかり意識を切り替えていこう、とするその前に、私は北のメインストリートから離れた第一区画内の人通りの多い街路沿いにある、無所属の亜人の少女たちが切り盛りする花屋に寄っていた。
意味も無く寄った訳ではない。今日は少し特別な日なのだ。彼と顔向けする準備をしなくてはならない。
店員にいくつか見繕ってもらいつつ、彼がとりわけ好んでいた一輪の薔薇を購入して店を出た。
そこからまっすぐメインストリートに戻り、ギルド本部へ。7時を回るころにはギルド本部もメインストリートに負けないくらいの活気に満ちており、入り口付近を通るだけで中の喧騒さが窺える。
私は入り口には入らず、その右を進み、道なりに足を進めること数十秒。そこには青み掛かった巨大な記念碑が幾つも立てられていた。大小様々あり、私はその中でも一際大きな記念碑の前に立った。
彼を思い出させるような勇猛でいて雄々しい記念碑の表面を指でな
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ