第75話 子供ってのは何処までも我が道を行くもの
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それが銀時めがけて歩み寄ってきていたのだ。
銀時は白夜の鞘に手を掛けた。幸いな事に相手の動きは鈍い。鉄子が此処から兄を担いで逃げるには充分間に合うだろう。その為にも此処で足止めする必要があるのだが。
「まさか70話近く過ぎて今更スライム退治をする羽目になるなんてなぁ。レベル上げなんてかったりぃが、覚悟して―――」
意気込みを込めて白夜の刀身を抜き放とうと鞘を掴み引き抜く。だが、鞘から出たのは白夜の根本までであった。其処から先は委細顔を見せていない。
銀時はギョッとなった。渾身の力を込めて居合の容量で抜き放つつもりだったのだ。だが、そんな思惑とは裏腹に白夜の刀身は根本までしかその姿を見せていなかった。
「ぬ……抜けねぇ……刀が……鞘から抜けねぇ―――」
銀時は思い出した。白夜と桜月にはそれぞれ意志と呼ばれる物がある。そして、それらは使い手を選ぶと言われていたのを。つまり、白夜は銀時を使い手とは認めていなかった事になる。随分御大層なプライドをお持ちのようだがはっきり言って今この場では邪魔以外の何物でもない。
これでは鞘ごと相手にたたきつける攻撃しかできないのだから。だが、果たしてそんな物理的攻撃があのゲル状生物に効果があるか?
疑念に囚われていた銀時の目の前で更に驚くべき事態が起こった。ゲル状の怪物が持っていた紅桜が突如まっすぐ飛んできたのだ。
いや、そこにあったのは紅桜の刀身だけではない。刀身の根本には化け物の体が付着している。化け物が腕を伸ばしてきたのだ。
「ちっ!」
咄嗟に白夜の根本で飛んできた紅桜を弾いた。刀同士がぶつかりあい火花が周囲に飛び散る。どうやらリーチの長さは相手の方がはるかに上手のようだ。しかも、最初の一撃を皮切りにまるで鞭の様に腕を撓らせて再度紅桜を振るって来た。
「調子に乗るんじゃねぇ!」
襲い掛かってきた紅桜を弾く容量でそのまま地面に突き刺した。鋭い刃は固い鋼鉄製の床を易々と刺し貫く。だが、深く突き刺さってしまった刀身はそう簡単に抜ける物ではなかった。
しかも、刀身には自分の体がくっついている為に身動きが取れなくなりその場に釘付けと言う形になってしまっていた。
そんなゲル状の胴体に鞘ごと白夜の横一閃が決まる。ゲル状の物体は上下で真っ二つになり地面に液状の水溜りを作る結果となった。
案外呆気なく片付ける事が出来たが、銀時の内情はとても晴れやかとは言えなかった。この紅桜は持ち主を必要としない。刀自身がその場にある物を自分にとって都合の良い形に変貌させてそれに寄生する。まるであの時の岡田と同じだ。だが、先ほど銀時が戦ったのはただの培養液の塊が人の姿をなしただけの事。人ではない。それに、相手が生き物でないのであれば何度でも蘇生させる事が可能という事になる。
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