序幕
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真門は方向音痴ではない、と自負している。事実、彼はむしろ地理勘は良い方だろう。しかしここは初めて訪れる初見の街。そもそも真門はつい数日前まで、自分が《神典学園》に編入することを知らされていなかった。それ故に、視察も何もできた物では無い。
故にここは何処だと放浪するうちに、郊外まで出てきてしまった。
そしてそこで。
「うわぁぁああ!!」
「や、やめ……」
「止めろ! 止めろぉぉぉっ!」
「ダメだ、止まらない!」
恐慌で狂い叫ぶ《神典学園》の生徒と思しき少年少女と、
「GOGAAAAAAAA!!!!」
漆黒の、影の様に揺らめく異形を発見したのである。
「うわお」
思わず間の抜けた感嘆詞がこぼれ出る。恐らく真門は、《神典学園》のカリキュラムの一つである、《対ヴァイラス実習》の場面に出くわしてしまったのだ。真門は変な時期からの編入なので、普通の授業は既に始まっているのである。
「GOAAAAAAAAA!!!!」
狂乱する《ヴァイラス》の形は、西洋の龍の様である。俗に『タイプ・ドラグーン』と呼ばれる種類のヴァイラスだ。サイズは比較的小柄なので…とは言っても三メートルは下らないのだが…恐らくはステージT。きちんと形を持ったヴァイラスの中では最弱だ。
しかし、腐っても全体的に見て最強と謳われるタイプ・ドラグーン。高校生にはにが重かったのだろうか。
「くっ……この……ッ! 止まりなさい!」
金色の髪をツーサイドアップにした、西洋系の顔立ちの少女が、ドラグーン・ヴァイラスの前に立ちはだかる。その手には光で構成された二本の剣。《神統者》に与えられた特殊な力、《インストール》によって顕現した神の力の具現化だろう。
「剣か……戦神系か、それとも剣神系か……?」
真門の口から、その素体となっているはずの神格の正体を推察する言葉が漏れ出る。それは聞こえていないのだろう、少女は気合と共にヴァイラスへと斬りかかる。
しかし狂乱の最中に居る影龍に、その斬撃は通用しない。いとも簡単に防御され、代わりにきつい打撃を受けてしまう。
「きゃぁっ!」
「おいおいおい」
目の前に吹き飛んできた少女をどうにかキャッチすると、地面に下ろす。
それによって真門の姿を漸く目に収めた少女は、驚愕にその瞳を見開いて叫んだ。
「あ、あなた……民間人!? ここは危険よ、早く逃げなさい!」
「とは言われてもなぁ……というかあんたら、担当教官はどうしたよ」
こういった場所には、大抵の場合担当の教師が付いている。彼らは腕の立つ《神統者》であり、不測の事態には素早く対処できるはずだが。
しかしその言葉に、少女はバツが悪そうに目を逸らした。
「その……お
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